エールフランス447便は、2009年6月1日にリオデジャネイロからパリへ向かう途中、大西洋上空で消息を絶ち、離陸からわずか4時間後に墜落した。この悲劇的な事故では搭乗していた228人全員が死亡した。

 大西洋上空を飛行中に消息を絶ったエアバスA330型機の残骸の位置を特定して回収する作業には2年を要し、捜索範囲は10,000平方キロメートルにも及んだ。そして残骸とともに、最後の瞬間が記録されたブラックボックスが回収された。

 この事故は、技術的な故障とパイロットが適切に対応できなかったことが原因で飛行機が失速し、毎分11,000フィートの速度で急降下したとされている。フランス民間航空安全調査分析局(BEA)によると、氷晶(大気中の水蒸気が凍結して形成される小さな氷の粒子)が形成されたことが、飛行機のオートパイロットシステムが予期せずに切断される原因となった。氷晶がセンサーに影響を与え、それによりオートパイロットは正常に機能しなくなり、最終的には飛行制御システムが予期せずに停止してしまったのである。

 そしてパイロットたちは対気速度の読み取りエラーに困惑し、失速時に機首を下げる代わりに上げてしまうという致命的なミスを犯した。飛行機が失速した際、正しい対処法は機首を下げて速度を増すことだが、彼らは機首を上げるという誤った操作をしてしまったのだ。

 32歳の副操縦士でファーストオフィサーのピエール=セドリック・ボナンは、「もう飛行機を制御できない!全く飛行機を制御できない!」と叫んだ。

 37歳の副操縦士でリリーフファーストオフィサーのデイビッド・ロバートは彼に「左に操縦しろ」と告げ、その後自ら操縦を引き受けた。しかし、ボナンが引き続きサイドスティックを引き戻し続けたため、彼らの入力は相殺され、「デュアルインプット」という警告が鳴り響いた。

228人が死亡した「エールフランス447便墜落事故」墜落する直前のパイロットの“最後の言葉”
(画像=大西洋上で発見された事故機の垂直尾翼 画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)

警報がコックピット内で鳴り響く中、58歳の機長マルク・デュボアは2人に「何をしているんだ?」と問いかけ、ロバートは暗い声で、「飛行機の制御が完全に失われた。何もわからない。すべて試した」と答えた。

 ロバートは自分自身に「上昇、上昇、上昇、上昇」と言い聞かせていたが、ボナンは「でも、もうずっと最大限に機首を上げている!」と返答した。この瞬間に機長のデュボアはボナンが失速を引き起こしていることに気づき、「ダメだ、ダメだ、上昇するな!ダメだ、ダメだ!」と叫んだ。

 ボナンは操縦をロバートに渡したが既に遅く、飛行機が失速状態から回復するには高度が足りなかった。

 ボナンは最後の試みとしてサイドスティックを激しく引き、「墜落する!信じられない。何が起こっているんだ?」と叫んだ。

 そして最後、誰の声かは不明だが「クソッ、俺達は死ぬんだ」という声が聞こえたとされている。

 なお、ブラックボックスによると、乗客は3分半にかけて墜落する間、この深刻な状況を知らされなかったようだ。

 2023年、エアバスとエールフランスは、この便に関連した過失致死の罪で無罪とされた。この事故を受けて、航空業界では空速センサーの新規格や、パイロットの訓練方法の見直しなど、大きな変更が行われることとなった。

 日本では日本航空123便墜落事故のボイスレコーダーの記録が度々話題になるが、エールフランス447便墜落事故のパイロットたちの墜落直前のやり取りもYouTubeなどにアップロードされているようだ。気になる人は検索してみてはいかがだろうか。

参考:Daily Star

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提供元・TOCANA

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