2024年5月19日、SNSのX(旧Twitter)で、「コンゴ民主共和国では、鉱山で働かせるために、アフリカ人がアフリカ人を売っている。2024」というタイトルの動画が拡散され、数日間で1,600万回以上再生された。この動画には、次の場面が映っている。
地面に掘られた穴の中に、泥にまみれた数十人の人々が集められ、手を空に掲げている。青い制服や私服を着た男性らは彼らを見下し、笑ったり、歌ったり、棒を手に命令したりしている。その様子は、さながら奴隷商人が商品の奴隷を管理しているようだ。
実は、この動画のオリジナルは2023年6月にTikTokで公開されていて、ナイジェリアの海軍学校における訓練の様子を撮影したものだ。仏メディア「ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)」の分析によると、動画内の女性がヨルバ語で話しているのが聞こえるという。ヨルバ語はナイジェリアの公用語で、西アフリカのいくつかの国々で話されている。
また、青い制服は、ナイジェリア・バダグリを拠点とする海軍学校の運輸管理技術研究所(ITMT)のものと特定された。SNSで #ITMT のハッシュタグで検索すると、同じ場所で撮影された動画がいくつかヒットする。これらはすべて新人の訓練を撮影し、SNSに投稿されたものだ。
フェイクニュースとともに動画が拡散されたのは、米国の極右で陰謀論者、アレックス・ジョーンズ氏がXで引用したことがきっかけだ。彼は、もとになる投稿を引用しただけでなく、独自の見解を次のように付け加えた。
自分自身に問いかけてみてはどうだろうか? なぜ企業メディアはこのような画像や動画を決して見せないのか? 白人が地球上の悪の根源であるという物語は不適切だ。何百年も前に西洋で限定的に行われていた奴隷制度に、人々はどのように罪悪感を覚えるというのだろうか。今日、これがアフリカ、中東、アジアで大規模に行われているのに。
ジョーンズ氏は、1969年にアポロ11号が月面着陸したことや、2001年のアメリカ同時多発テロ事件が発生したことなどについても、隠匿や捏造があったとする陰謀論を唱えてきた。また、2022年8月には、2012年に発生したサンディフック小学校銃乱射事件の被害者遺族に対する名誉毀損などに対して、約10億ドルの賠償金を支払うよう命じる判決が下された。こうした経緯をふまえると、ジョーンズ氏の主張はいずれも信憑性が高くないといえるだろう。
近年は、インターネットの発達によって、誰もが気軽に情報を受信できるようになった。一方で、誤情報や偽情報を迂闊に拡散することで、他者の権利や名誉を毀損したり、社会に混乱をもたらしたりしかねないというリスクが常につきまとう。ネットユーザーには、情報を拡散する前に、その情報の発信者が誰なのかを確認し、その情報が信頼に足るのかどうかを判断することが強く求められている。
2024年5月19日にXで拡散されたフェイクニュースから学ぶべきことは多い。ネットリテラシーの大切さを改めて意識してもらいたい。
参考:「RFI」、ほか
文=標葉実則
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
提供元・TOCANA
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・航空機から撮影された「UFO動画」が公開される! “フェニックスの光”に似た奇妙な4つの発光体
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・ネッシーは巨大ウナギではない! 統計的調査結果から数学者が正体を予測
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?