サービス業として難しいさじ加減が求められる

 高齢者のコミュニティが多い地域ほど、高齢者グループが飲食チェーン店に長時間滞在するという現象が起きる可能性は高くなるでしょう。高齢者に限らず時間に余裕のある人が、飲食以外の目的で時間を埋めるために飲食店を利用することもあるでしょう。学生や主婦が友達とお話をするために長時間、飲食店を利用することもあります。逆にオフィス街の会社員中心のお店は、食事やちょっとした休憩のための利用となるので、1時間も滞在するケースは少ない。席数の少ない個人経営の飲食店だと長時間の利用は嫌がられることが多く、長居したいときは放っておいてくれる大箱のチェーンが選ばれやすくなります。

 このような長居客に対して飲食店側は本音では「食事が済んだら早く帰ってくれないかな」と思っています。追加オーダーがあるなら歓迎されることもありますが、繁盛店の場合、追加オーダーを少しもらうよりも、新規客を入れてオーダーを取ったほうが売上は上がります。飲食店の売上は「客単価×人数×回転率」ですから、賃料を払いスタッフを雇っているお店では、高級店を除くと回転率の低いお店はまず成り立ちません。

 また、売上の問題だけでなく、待っているお客さんがいると、スタッフはその方たちのストレスも考えて気を配りますし、帰してしまうお客さんがいると申し訳ない気持ちにもなります。かといって、お客さん側からすると、追い立てられるようなお店にはあまり行きたくないでしょうから、そこはサービス業としてのさじ加減が大事であり、難しいところです。待っているお客さんがいない状況では、長居客をそのままにしておくことが多いでしょう。

 こうした長居客に対する飲食店の対応は、店舗のサイズや状況によってまちまちです。チェーン系の席数が多い大箱のお店でしたら、100席のうち20席が長居客で占められても、残りの80席が一定の回転率になれば経営は成り立ち、運営会社もそのあたりはある程度は計算しています。またチェーン系は正社員の店長とアルバイトで運営しており、長居客に関して本部のマニュアルに特に記述がなければ、トラブルが起きないよう放置することが多いでしょう。

 一方、街場の20席くらいの小さなお店の場合、多くのお客さんが長居してしまうと回転率が下がり、さらにそんなお客さんが常連になってしまうと潰れてしまうので、そろそろかなと思ったタイミングで「お食事がお済みのようでしたら、お会計よろしいでしょうか?」と退店を促すことになります。トラブルを避けるため「当店のお席は2時間制となっておりますのでご協力よろしくお願いします」「店内が混みあってきましたら、2時間以上滞在のお客様は他のお客様にお席を譲っていただけるようご協力よろしくお願いします」などとHPや店内掲示で告知したり、予約の際に伝えている店もあります。

 大箱のお店でも100席中、半分以上の席が長居客で占められると利用時間制限のような対策が必要となってきます。気に入っているお店に長く存続してもらいたいと思ったら「ほどよく」を心掛け、お店や他のお客さんのことも考えて利用すべきです。そうすれば、本当の意味で「ありがたいお客様」と思われるでしょう。

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?