目次
スズキの「スズライト」と「スズライド」

スズキの「スズライト」と「スズライド」

「対決」シリーズ~基本は変わらぬシンプル・イズ・ベスト?なスズキ今昔対決~「スズライト」と「スズライド」【推し車】
(画像=1955年の「スズライト」から68年を経た2023年に現れた特定小型原付コンセプトカー「スズライド」,『MOBY』より 引用)

何か共通点のあるクルマをとにかく比較してみる「対決」シリーズ…今回はスズキの4輪車参入第1号車で1955年発売の初代「スズライト」と、ジャパンモビリティショー2023で初公開、スズキの特定小型原付参入第1号となるか?!という、スズライトとは名前が一文字違いの「スズライド」の2台を紹介します。どちらも新境地を開拓する意欲的な新型車という意味で共通していますが、68年越しに「スズライト」から濁点追加で「スズライド」と名付けたあたり、スズキにとっては原点に帰る想いを感じさせます。

目次
スバル360より早く、初代クラウンと同期の初代「スズライト」

スバル360より早く、初代クラウンと同期の初代「スズライト」

「対決」シリーズ~基本は変わらぬシンプル・イズ・ベスト?なスズキ今昔対決~「スズライト」と「スズライド」【推し車】
(画像=初代スズライトSL(1955年),『MOBY』より 引用)

現在も乗用車の販売を続けている日本の主要自動車メーカーのうち、企業としては戦前から存在していながら、4輪車への参入どころか2輪車への参入も戦後からという、かなりのスロースターターだったスズキ。

戦前にはオースチン セブンを模した試作車を作るなど、当初から小型大衆車志向が強く、戦後にホンダと同じく自転車用補助エンジンで1952年に2輪参入、ほどなく1954年には2輪車そのものを発売、翌1955年に初の四輪車「スズライト」も発売と、動きは急でした。

もっとも、織機メーカーから始まり機械加工で軍需産業の一翼を担っていた時期もあるとはいえ、自動車の生産・販売経験が皆無のスズキがすぐに完全オリジナルの自動車を作れたわけではありません。

いくつか資料として輸入した中から、西ドイツ(当時)のフロントエンジン・前輪駆動の超小型車、ロイト LP400を参考にしたのも、必要な工作機械がないのにオーソドックスなフロントエンジン縦置き・後輪駆動のFR車など作れない…という事情から。

それならビートルやシトロエン 2CVもあったのだから、RR車でよいのでは?と思ってしまいますが、前輪に駆動と操舵の両方をさせるFF車は、構造が複雑で耐久性を持たせるのに高度な工作技術が必要…などとは「知らぬが仏」だったのでしょうか。

まだ戦後復興期で新型車の審査などいい加減な時期でしたから、アレコレと問題を抱えつつも発売されたスズライトは早速、静岡県内の開業医に買われていったそうですが、当初はボディなどほとんど手作業の板金加工で作り、生産台数も大したものではありません。

当初はセダンやピックアップなど4種類あったボディタイプも、「税金が安いから」と、後の初代アルトを思わせるライトバン1車種のみになります…いらないと思ったら切り捨て安く上げる、シンプル・イズ・ベストなスズキの伝統はもう始まっていました。

1959年にモデルチェンジして2代目になった後は、乗用登録版の「フロンテ」を派生させて、1963年の第1回日本グランプリでスバル360を見事撃破するまでに成長するのですから、大したものです。

1949年に誕生した軽自動車規格には、多くの零細中小メーカーが挑戦しては有象無象のごとき軽自動車(らしきもの)を少数生産しては消えていったのですが、中でもスズキはスバル360(1958年)以前の軽自動車メーカーで、唯一の生き残りとなりました。

目次
意欲的な新型車か、原点回帰か?特小コンセプト「スズライド」

意欲的な新型車か、原点回帰か?特小コンセプト「スズライド」

「対決」シリーズ~基本は変わらぬシンプル・イズ・ベスト?なスズキ今昔対決~「スズライト」と「スズライド」【推し車】
(画像=スズライド(2023年),『MOBY』より 引用)

「スズライト」発売から68年たった2023年、東京モーターショー改め「ジャパンモビリティショー」で発表されたコンセプトカーが、この「スズライド」。

一文字違いの車名と、タイヤが4つあることを除けば何も共通点はありませんが、ザックリ言ってしまえばクルマなんてタイヤが4つあって、走って曲がって止まりさえすれば、どれも大した違いはないものですから、細かいことを気にしても仕方ありません。

他にも共通点があるとすれば、スズライドにはエアコンもパワステもないことでしょうか…見た感じ、キャビンどころか屋根すらなく、2輪車のようなバーハンドルなので、付けようもないですが。

実は初代スズライト発売から68年経つ間、スズキでは大小の2輪車や、ミニカーからSUVまでの4輪車以外に、高齢者向けの電動車椅子を1974年から、より積極的に動き回る発展型とも言える「セニアカー」を1985年から販売しています。

2023年7月に最高速度は車道は20km/h、歩道は6km/hで16歳以上なら免許不要の新たな原付自転車規格、通称「特小」(特定小型原動機付自転車)が生まれた時、2輪や3輪ではなく4輪のコンセプトカーを作ったのは、スズキが長年セニアカーで積んだ経験から。

見るからにシンプル・イズ・ベストで、収納ボックスに腰掛けているようにしか見えない座席からは、「余計なものは一切不要!」という、スズキの強い意思を感じさせます。

スズキといえば現在の鈴木 俊宏 社長は、初代アルト開発時に社長だった父・鈴木 修 相談役を思わせる勢いで、新型車の開発現場に「余計なものは不要!」と檄を飛ばしているそうですが、スズライドほどそれを体現した「クルマ」もなさそうです。

それでいて、多少の段差などものともせず、アウトドアでも使っても乗り心地が良さそうな4輪独立懸架など、ツボはしっかり抑えているあたりにスズキらしさを感じます。

2024年時点でこのまま市販するような話は出ていませんが、仮に市販されたらこれが21世紀の「スズライト」と名乗り、初心に返ったことにしてもいいかもしれません。

今年で50歳になった筆者ですが、15年後や20年後に高齢者として1人でオデカケする時、「スズライド」ならセニアカーと違って年寄り臭くなくていいかな…と思います。

「これで出かけようかな?」と思わせる意味で、「スズライド」は間違いなく「スズライト」の末裔なのでしょう。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

【関連記事】
【新車情報カレンダー 2021~2022年】新型車デビュー・フルモデルチェンジ予想&リーク&スクープ
運転免許証で学科試験の点数がバレる?意外と知らない免許証の見方
今一番危険な車両盗難手口・CANインベーダーとは?仕組みと対策方法
SNSで話題になった”渋滞吸収車”とは?迷惑運転かと思いきや「上級者だ」と絶賛
トヨタ 次期型ノア&ヴォクシーに関する最新リーク情報すべて