2023年は過去最大の販売を記録するも2024年6月には前年比で18%減に
日本も夏休み期間に入りましたが、こちらドイツもすっかりバケーションの季節になりました。ドイツでは学校や幼稚園の休みは州ごとに違い、少しずつずらしてありますが、それでも電車や飛行機、南欧や東欧、北欧へ向かう方面のアウトバーンは特にキャンピングカーや荷物をパンパンに積んだクルマで大混雑します。
ADAC(ドイツ自動車連盟)は、毎年のようにアウトバーンの混雑情報を発信してくれていますが、混雑しようがしまいが通らざるを得ない状況ですよね。多少は迂回等もありますが、仕方がありません。
この時期はモータースポーツも少し夏休みになる事から、私は自宅でのんびりする事が出来ています。私の住むミュンヘンは必ずしも年中お天気が良いワケではなく、冬はどんよりした曇りか霧、春や秋は雨の日が多いので、夏場は一番美しい季節なのですが、多くの方が街を脱出し、ビーチや山等にバカンスへ出掛けておられます。
さて、ヨーロッパは大半が陸続きの為、ガソリンが高騰しているとはいえ、クルマでバカンスに行く方も多いのです。昨今では各国の高速道路のサービスエリアにはEVの充電施設が充実している事もあり、事前にアプリ等でチェックしながら走行すると長距離移動にもさほどドキドキする事も少ないのかも知れませんね。ドイツ以外のヨーロッパの国では、高速道路には制限速度が設けてありますので、ドイツほどに踏み込む事も少ないのかも知れません。
ミュンヘンの街では末尾にEが付くナンバー(EV車やハイブリッド車)も増えてきました。完全な電気自動車なら文句なしにEナンバーなのですが、ハイブリッド車には少々ややこしい事になっています。最低でも50km以上をモーターで走行可能か、1kmの走行で最大50gまでのCO2の排出量ならばEナンバーを取得する事が可能です。2018年までの車両においては、以前の規則の40km以上のモーター走行が出来る事が条件です。
ただ、このEナンバーを取得する事は義務ではなく、一般的なナンバーを使用する事も出来ますが、EVやハイブリッド車等のオーナーさんにはEナンバーを取得しておいた方が利点な事も多々あるようです。ドイツでは2023年3月1日からはバス専用レーンの走行が可能になりました。また、市町村によって違いはあるそうですが、市街地の進入制限のある道路を通行可能であったり、EV車両は駐車料が無料になる場合もあるようですが、いずれも自分でしっかり標識を確認しながら通行や駐車をしなりませんね。ドイツでは2030年まではEV車両の自動車税は継続して無料ですが、プラグインハイブリッド車はCO2の排出量や排気量によって課税額が変わるようです。
2~3年前にレンタカーでトヨタのC-HRを借りて、ベルギーのブリュッセルへ取材に行った事がありましたが乗り易くて快適でした。市街地やアウトバーンでも速度制限のある区間では全く問題ありませんが、130km/h以上を出すと非常に燃費が悪かった経験があります。
ネックとなったのがドイツアウトバーン走行です。ベルギーのアウトバーンは120km/h制限なので問題ありませんが、ドイツ国内では速度制限が解除される区間もある為、流れによっては、そこそこスピードを出す場合もあります。
トヨタの正規販売店を経営する友人ドミニクに、道中に電話をしてみたら、120km/h以上出すとめちゃくちゃ燃費が悪いからゆっくり走った方が良いよ、と言われました(笑)。さすがに120~130km/hで走っていると遅すぎてかえって危ない場合もありますので、臨機応変に! 先日にはプラグインハイブリッドのBMW新M5が発表となりましたが、果たして燃費はどうなのでしょう?
ドイツではEVの高額な国の助成金策を打ち出して一気に街中にもEVやハイブリッドカーが増えましたが、2023年の途中で予算の助成金が枯渇して打ち切りになりました。2024年は国のEV購入の助成金はなくなりましたが、ウォールボックスや電動自転車の補助金制度は新規に出来ました。自動車メーカー独自のエコ割りのような購入プランはあるようですが、国からの助成金がなくなり、今年のEVの売り上げは下がっているようです。
2023年にドイツではEVは52万4200台という過去最大数が新車登記されました。6月の比較では2024年のEV新車登記は、前年比で18%も下がっているそうです。いまドイツで一番の販売数を誇るのはVWのID.3です。それも6月の全ての自動車販売数の中で総合3位を獲得する程に人気のようです。
ミュンヘンの街をざっと見た感じでは、テスラとドイツ御三家(アウディ・BMW・メルセデス・ベンツ)が多いように感じますが、最近はクプラも増えました。残念ながら日本メーカーは極僅かで、韓国車や中国車の方が目に着くように感じます。
ドイツではEVの新規登記数に関して何かトリックがあるのか? と感じてしまうのですが、ルノーのZOEが出た際にはあちらこちらに溢れ返っていたのにいまや殆ど姿を消し、数年前にはポールスターやLynk & Coが一気に増えたと思ったら、今は見掛ける数も随分と減り、次は昨年あたりからMGが一気に増えました。
テスラはベルリン郊外に作った超巨大ファクトリーが稼働していますので、アメリカのメーカーでありながら、もはやドイツ車のような認識なのかという位に数多く走行しています。2024年の6月のドイツでのEV車の販売台数トップ30が発表されたのですが、残念ながら日本車は1台もランクインしていません。その代わりに韓国車の4モデルがランクインしています。疑惑のMGは第二位です。MGの販売店さえどこにあるのか分からないような状態なのですが、クルマはあちこちで見掛けるのがフシギです。そんなMG4の6月の販売台数は前年比の+80%!
2022年の6月に欧州委員会が『2035年からは内燃機関の販売禁止』という驚きの政策を発表してからは、なにやらとんでもなく慌ただしくEV化へ一直線的な方向転換になったと思いきや、水素やバイオ燃料等のカーボンニュートラル燃料の研究や開発が早急に行われている事もあり「いやいやEV一辺倒じゃなくてもよいのでは?」的な空気もあり、様子を見ている派が私の周りでは大半を占めています。クルマを買い替えるという事はかなりの高額で気軽には出来ないだけに、もうちょっと時間が欲しいというのが正直なところですよね。
もちろん、EVの快適さや便利さも否定は出来ませんし、それを選択するかしないかはユーザー次第です。ライフスタイルに合わせて各自が自由に選ぶ権利がりますものね。アウトバーンで家族連れの方が充電ついでにお子さんをキッズコーナーで遊ばせたりワンちゃんのお散歩をされている方をお見掛けしますが、そのような方にはEVの長距離旅はぴったりなのかも知れませんね。
私などはサービスエリアに立ち寄っても最長30分程で目的地へ向かって出発してしまいますので、急ぎの長距離ドライバーには厳しいかも知れません。
都市部では随分とインフラが充実してきたとは思いますが、特に夕方の帰宅時になると埋まってしまっていますので、必ずしもいつも好きな時に充電出来るとは限りません。また、私が仕事で向かう様々なサーキットやそこへ向かう道中の大半が山道だったり、田舎の国道とあり、そう頻繁には充電ステーションを見掛けません。
きっとEVカーのオーナーさんたちは、目的地までの距離と消費電力のおおよそを計算しながらドライブされているのでしょうね。私のようにいつもギリギリ給油をするような人間にはキケンです(笑)。
文・池ノ内 ミドリ/提供元・CARSMEET WEB
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