この時期から企業が貯蓄超過になり、金利がゼロになってデフレになった。これは不良債権の清算にともなう一時的な現象だと思われたが、その後も20年にわたって続いた。それを不況の原因と誤認した安倍政権は「デフレ脱却」のために異常な金融緩和をやったが、これが結果的に資本逃避を招いて製造業の空洞化をもたらした。
安倍政権のもう一つの失敗は、消費税の増税を先送りして、法人税をほとんど下げなかったことだ。次の図のように日本の法人税率はアジア最高であり、これが空洞化の大きな原因になった。
社会保険料の事業主負担は「第2法人税」もう一つ意外に見逃されているのが、社会保険料の事業主負担である。これは赤字企業も負担する「第2法人税」であり、法人税を払っていない6割の赤字法人にとっては、こっちの負担のほうが大きい。労働者にとっても給料の30%も取られる社会保険料の負担は、消費税よりはるかに重い。
法人税を下げて消費税を上げようとした大蔵省の方針は正しかったのだが、最初に竹下内閣でつまずいて内閣が倒れ、5%に上げた橋本内閣が金融危機で倒れ、安倍政権はそれにこりて2度も増税を延期し、すっかり消費税はきらわれものになってしまった。
岸田政権は50年前の台所財政に戻ろうとしているが、それが何をもたらすかは明らかだ。減税でインフレはさらに悪化し、企業は海外に出て行き、円安が進行し、実質賃金はさらに下がるだろう。
ただし一発逆転のチャンスもある。それは岸田首相が「3%のインフレを10年続ける」と宣言して、大幅な減税をやることだ。これによってインフレ税で預金者と年金生活者が300兆円ぐらい損するので、所得分配も世代間格差も是正できる。ただしインフレと金利が発散して大惨事にならないとは保証できない。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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