ちなみに、クナイスル女史はプーチン氏を招いて結婚式を挙行したが、その相手とは2020年4月に離婚している。外相職を失い、夫を失い、そして今、プーチン氏支持者と受け取られて、欧州諸国からはバッシングを受けてきた。いずれにしても、ロシアの独裁者プーチン氏と関係を深めた政治家は平穏な人生を送ることが難しいのは、シュレーダー氏だけではなく、クナイスル女史も同じだ。

クナイスル女史は親ロシア派としてバッシングを受ける日々に直面、オーストリアで職が見つからなかったためにフランスのマルセイユ、そしてレバノンのベイルートに移動したが、最終的にはプーチン氏の出身都市サンクトペテルブルクに住み、同市の大学の分析センターを指導することになったわけだ。最近は、クナイスル女史のポニーがロシア軍用機でロシアに輸送されたことが国際メディアの話題を呼んだばかりだ。BBCは「オーストリアの元外相カリン・クナイスル氏はポニーとともにロシアへ移住した」と報じたほどだ。

クナイスル女史はBBCとのインタビューで、「ロシアで今、快適に暮らしている」と述べ、サンクトペテルブルク大学の「学問の自由」を称賛し、「身近な環境で抑圧を経験していない。ロシアで働く機会を得られたことに本当に感謝している」と語った。

同女史はまた、欧米諸国の対ロシア制裁が「機能していない」、「対ロシア制裁が望ましい結果をもたらしていないことを多くの人が認めざるを得ない」と強調。プーチン大統領については「彼は最も知的な紳士だ」と高く評価している。ロシアのウクライナ侵略についてはこれまでの通り、何も批判していない。

なお、クナイスル女史は、「オーストリアでは、私が現在ロシアの大学で働いているという理由で、私の国籍を剥奪するよう求める声が聞かれる。ウィキペディアによると、私は汚職、反逆罪、そして30年間KGBに勤務していたスパイ容疑で告発されている。この種の汚い中傷はすべて人生を破壊する。だから法的措置が講じられるまでは戻りたくない」と述べ、オーストリアに戻る可能性を否定している。

クナイスル女史は英語やフランス語のほか、アラブ語の達人といわれている。イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム過激テロ組織ハマスとの間の戦争について、クナイスル女史の意見が聞けなかったことは残念だった。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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