73歳の女性のお腹になんと35年間ずっと胎児がいた――。その胎児は石化した“石の赤ちゃん”だったのだ。
■きわめて稀な症例である「石児」とは?
赤ちゃんが生まれる前に亡くなり、そのままお腹の中に居座っていたらどうなるのだろうか。
73歳のアルジェリア人女性は、驚くべきことに本人はもちろん誰にも気づかれずに35年間もお腹の中に“石の赤ちゃん”を抱えていた。医師らはこの赤ちゃんの存在を知って大きなショックを受けたという。
きっかけはこの女性の腹痛であったが、診断した医師は女性の子宮内に35歳の“石の赤ちゃん”の胎児を発見して驚いた。
73歳の女性のX線スキャンにより、“石の赤ちゃん”の衝撃的な写真が明らかになり、その胎児は生後約7カ月、体重が約2000グラムであることが判明した。
このアルジェリア人女性は35年間、本人も気づかずに“石の赤ちゃん”をお腹に抱えながら普通の生活を送っていたという。
きわめてまれな症状である「石児(lithopedion)」は、胎児が妊娠中に死亡し、胎児が大きすぎて体内に再吸収できない場合に発生する。アメリカ国立医学図書館によると、感染症から母体を守るために胎児が石灰化するということだ。ということは一種の免疫反応のメカニズムであるようだ。
アラブ首長国連邦のメディア「Al Arabiya(アル・アラビーヤ)」によると、女性はそれ以前にも病院で治療を受けたことがあったが、この“石の赤ちゃん”は2016年まで発見されなかった。
米クリーブランド大学病院症例医療センターのキム・ガルシ医師は、細胞組織の石灰化は母体を感染から守るが、この石灰化によって胎児が何十年も検出されない可能性があると指摘している。またたとえ発見されたとしても痛みもなく健康状態に問題がなければそのまま放置されてしまうケースが多いということだ。
イギリスの医学ジャーナル「Royal Society of Medicine」に掲載された1996年の論文によると、石児の症例は290件しか記録されておらず、最も古いものは1582年である。
68歳のフランス人女性、コロンブ・シャトリ夫人は死後の司法解剖の結果、彼女が“石の赤ちゃん”をお腹に抱いていたことが明らかになり、彼女の胃は生涯を通じて「腫れ、硬く、痛みを感じていた」という。彼女はそれを28年間も我慢していたのだ。
2009年には中国人女性、ファン・イージュンさん(92歳)が、半世紀以上お腹に抱えていた“石の赤ちゃん”を摘出している。さらに2013年には、コロンビアの高齢女性が40歳の“石の赤ちゃん”をお腹に抱いているのが発見された。
母体を守るために自ら石となる“石の赤ちゃん”は死してなお、お母さんと一緒にいたいと望んでいるのだろうか。しかしもちろん早期に発見されるべきであり、定期的な健康診断が重要であることをあらためて思い知らされる話題でもあるだろう。
参考:「Daily Star」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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