人間の顎骨だと気づくのは難しい
では、写真のタイルに埋まっていた顎骨は、一体誰のものなのでしょうか。
専門家によると、今回のタイルに使用されたトラバーチンは、トルコ西部のデニズリ盆地の採石場から切り出されたものであり、ここで採れる石は180万年前から70万年前のものだと考えられています。
しかし投稿された写真だけでは、そこに埋まっていた人類の種や年代について正確に知ることは難しいようです。
ホークス氏は、「明らかに人類の親戚だと考えられるが、現代人類の可能性を排除したり、どの古代集団に属していたかを突き止めたりするには、詳細な研究が必要だ」と語っています。
幸い、投稿者である歯科医は、複数の大学の研究者からアプローチを受けており、現在、タイルとその顎骨については詳しく調査されているようです。
ちなみに、「なぜタイルとして一般住宅の床に敷かれるまで、誰も顎骨の存在に気づかなかったのか」という疑問については、ホークス氏が次のように答えています。
「採石場では、トラバーチンやその他の石を大きなパネルに粗削りし、研磨前に基本的な品質検査が行われます。
とはいえ、小さな穴や模様、混入物があったとしても、それらはトラバーチンの特徴の1つであり、そもそも人々は、それを好んでトラバーチンを求めるので、検査の段階で注意深く見られることはありません。
工場でも、機械でトラバーチンがカット・研磨され、次々と積み重ねられるため、細かく検査されるわけではないようです。
また、トラバーチンを購入する消費者も、サンプルを見て岩の種類を選択しているだけなので、家の床に設置されるまで実物を見ることは無いでしょう」
そして、タイルに何かが含まれていたとしても、普通の人であれば、それが何か気づくことは通常ありません。
歯科医だからこそ、人間の顎骨だと見分けることができたのです。
今回の出来事は、もしかしたら私たちの自宅の床タイルにも、人間の骨が埋まっているかもしれないことを示唆しています。
もし、天然石のタイルから変わった物体を発見したなら、SNSに投稿すれば思わぬ発見になるかもしれません。
参考文献
A dentist found an ancient human jawbone embedded in his parents’ tile floor
How many bathrooms have Neanderthals in the tile?
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。