「畳の上で死にたい」とは多くの願いかもしれないが、地球上には死ぬことを禁じられた場所があるという。いったいどんな理由で死が禁じられているのだろうか。
■死ぬことが禁止されている場所
北極圏にあるノルウェー領の島々であるスヴァールバル諸島では死が禁じられているとネットで話題になったことがある。もし迂闊にこの地で死んでしまったら、死んだ後でも罪に問われるというのだろうか。
実は正確には死が違法とされているわけではなく、遺体の土葬が禁じられているということだ。
酷寒の環境下では土葬しても遺体が分解されにくいため、感染症などを引き起こすウイルスが遺体の中で温存され再感染の可能性があることから、当局は土葬を禁止したのだ。
どうしてもスヴァールバル諸島の墓に入りたい場合は、ノルウェー本土などで火葬しその遺骨を墓に安置することになる。そしてそもそも島には病院が1つしかなく、死期が近い者を看取る医療的な余裕はないということだ。同じ理由で出産もほぼ不可能である。
どんな場所であれ事故死する可能性はゼロではないため、死が違法となっているわけではないが、事実上はスヴァールバル諸島では死ねないのだ。このようなケースはほかにもあるのだろうか。
例えば2015年8月、イタリアのセッリーア(Sellia)の市長は、人々が「自治体内で病気」になることを禁じ、そこで死ぬことも許されないと明言した。定期健康診断を受けずにこの法律に違反した場合、年間10ユーロの罰金が科される可能性があるのだ。
荒唐無稽に思われるルールだが、この法律は地域住民の健康的な生活を促進することを目的として制定された。その背景には深刻な人口減少があり、住民の健康管理を強化しなければ人口減で増税を招きかねないことからこの法律が導入されたということである。
同じようなケースとして2000年と2008年にフランスの2つの村は住民に死ぬことを禁じている。どちらの場合も地方自治体が墓地を拡張することが法的に禁止されたため、抗議の意味で、墓地の区画を持っていない村民に対して、村内で死ぬことを禁止したのである。
これと同じ戦術は2005年にブラジル、2012年にイタリアの地方自治体でも行われている。
この過激な(!?)条例は案の条、住民に多大なインパクトを与え、いずれも最終的には墓地の拡張が許されることになっている。
このように地方行政の事情からくるケースのほかにも、かつては宗教上の理由で死が禁じられた事例もいくつかある。
現在ユネスコの世界遺産に登録されているギリシャのデロス島は古代ギリシアにおいてきわめて神聖な場所であったことから、紀元前6世紀にアテナイの指導者、ペイシストラトスはデロス島での死と出産を禁じた。それまであった墓は掘り起こされて遺体が島外に移送されたという。
厳島神社で有名な広島県・宮島(厳島)もかつては死と出産が禁じられていた。そもそもはこの島に住めるのは神主と巫女だけであったのだ。この規則は明治元年の1868年に廃止されたのだが、現在でも島内での埋葬と火葬は許可されていない。そして出産できる施設もないので、規則は事実上今も守られている。
超高齢社会の到来で“終活”の重要性も広く認識されるようになっているが、自分の“死に場所”がどこになるのか、折に触れて考えてみてもよさそうだ。
参考:「IFLScience」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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