最近の円安の原因が産業空洞化だということは、多くの専門家のコンセンサスになりつつある。この空洞化を是正するには対内直接投資を増やす必要があるが、そのGDP比は約5%で、198ヶ国中の196位。北朝鮮より低いという驚くべき状況である。
対内直接投資のボトルネックは「高度人材の確保」これは20年ぐらい前、私が経済同友会で講演したテーマだったことを覚えている。その後、政府は「対内直接投資100兆円」などの目標を掲げたが、状況はまったく変わらない。
その原因はよくわからないが、JETROの外資系企業アンケートによれば、外資が日本企業を買収するときのボトルネックは高度人材の確保だという。特に英語のできる技術者が少なく、ペラペラ英語をしゃべる人材は実務能力がない。
では日本人が無能なのかといえば、毎年発表される知能テストの成績では、日本人はいつも世界一である。
ところが日本生産性本部の毎年発表する労働生産性の順位は、これも毎年、G7で最下位である。製造業の生産性は高いが、非製造業の生産性が低い。この最大の原因は経営形態が古く、雇用の流動性が低いことである。
しかし経産省は中小企業を無担保融資などで手厚く保護し、厚労省は雇用調整助成金で社内失業に補助金を出し、財務省は中小企業を税制で優遇する。その結果、サービス業の労働生産性はG7最低で、しかも2010年代に下がっている。
アベノミクスが雇用の空洞化をまねいたこれが対内直接投資の進まない原因でもある。企業買収の目的は間接部門を人員整理して経営効率を上げることだが、日本では企業を買収しても人員整理が許されないので企業買収の意味がないのだ。
日本の経営者も海外企業の買収には積極的だが、海外企業に買収されることを極端にいやがる。外資(日本以外のすべての国)の人事システムが日本とはまったく違うからだ。スマホでいうとiOSとAndroidのようなもので、まぜると動かないのだ。