地球上の生命は脆弱だ。数十億年にわたる地球の歴史の中で、無数の種が絶滅してきた。人類もまた、様々な形でこの過程に寄与してきた。その最大の要因が自然破壊ではないだろうか。

 地球上の生物多様性の記録を保存することは困難だが重要な任務だ。万が一の事態に備えて、標本を保管する多くの保管庫が存在する。そして今、国際的な研究チームが月面に保管庫を建設することを提案している。

 この提案を主導しているのは、スミソニアン国立動物園・保全生物学研究所のメアリー・ハグドーン博士だ。博士は地球上で最も絶滅のリスクが高い動物種を長期的に保存するための施設を月面に建設することを目指している。

 サンプルは凍結保存されるため、月面の一部には有利な条件が整っている。特に両極の一部のクレーターの底では日光が永久に当たらず、ほぼ摂氏マイナス196度以下の温度が保たれているからだ。

 このような特性は、長期的な保管庫の安定性にとって非常に有利だ。人間の介入や電力供給が不要で、サンプルを安全に保存できる。これらは地球上の保管所で課題となる要件の一部であり、地球での保管では、これらの問題がシステム全体にリスクをもたらす可能性がある。

月を“ノアの方舟”に!?人類の未来を託す月面バイオ保管庫計画
(画像=Albrecht FietzによるPixabayからの画像,『TOCANA』より 引用)

月面には他にも利点がある。月の大気は非常に薄く、ほぼ真空状態であるため、天候を心配する必要がない。また、月の地震も地球のものとは比べものにならないほど小さい。地球上の保管庫は、アクセスが困難で安定した地域に建設されているが、それでも危険性を最小限に抑えることはできても、完全に取り除くことはできない。有名なスヴァールバル世界種子貯蔵庫でも、周囲の永久凍土の予想外の融解により入口トンネルに水が漏れ出し、改修工事を余儀なくされたことがあるほどだ。

 この構想には大きな可能性があるが、単にカプセルを月に送るだけでは解決しない問題が多い。研究チームは、このような保管庫を建設するにあたり、さまざまな課題に直面している。その一つは輸送方法であり、もう一つはサンプルを放射線からどのように保護するかという問題だ。さらに、そのような施設の管理・運営方法も重要な課題である。

 研究チームは、星型ハゼ(学名:Asterropteryx semipunctata)という魚を使ってプロトコルを開発する予定だ。月面のバイオ保管庫では、線維芽細胞を含む動物の皮膚サンプルを凍結保存し、この線維芽細胞からクローンを作成することが可能になる。

 研究チームは、宇宙機関とパートナーシップを結んで国際宇宙ステーションでテストを行い、将来予想される課題の一部を模擬的に再現することを目指している。

 人類の英知を結集し、地球外に生命の記録を残す。これは、私たちから子孫への贈り物となるのだろうか。

※参考:IFLScience

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提供元・TOCANA

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