アメリカ海軍大佐であり航空航法の第一人者だったP.V.H.ウィームスが、秒単位での経過時間の計測を目的に1929年に考案し、ロンジンが時計として具現化した通称“ウィームス・セコンドセッティングウオッチ”と呼ばれるパイロットウオッチ。40年代のその第2世代を再現したのが“アウトライン・セコンドセッティング”である(詳しくは当連載32回参照)。
第2世代は、経過計測を行うスケールが、文字盤中央の回転ディスク式だった第1世代から回転ベゼルに目盛りを設けたの通称“ウィームスベゼル”に変更され実用性が格段に向上した進化版だった。そのため軍用としても採用されるようになり、ロンジン1社だけでは賄いきれなかったため、オメガやモバード、ジャガー・ルクルト、ゼニスなどの名だたる時計メーカーでも製造された。
そして、ロンドンの時計商社であったゴールドスミス&シルバースミス社を通じてイギリス空軍に納入。一方、アメリカ陸軍航空隊では主に航空兵が使うナビゲーションウオッチ“タイプA-11”のひとつとして実際に制式採用された。まさに軍用パイロットウオッチの名作のひとつと言える存在なのだ。
そのため、インデックスは軍用では必須となる判読しやすいフルアラビア数字。双方向に回転するウィームスベゼル。そして計測時にベゼルが回転しないように止めるためのロック機構を装備するという仕様は各メーカー共通。ただ止め金具などの仕様はメーカーによっても、時代によっても微妙に違っていた。
そこでアウトラインでは、このウィームスベゼルを再現するにあたって、イギリス空軍に納入されたと言われるロンジンの40年代当時のセコンドセッティングウオッチ(上の写真参照)が装備していた止め金具の仕様に倣って再現している。
先のオメガとモバードとの違いは二つ。ひとつはベゼル側面に設けられたギザギザ型の溝に一カ所ではなく二つの爪が2カ所で噛み合う構造だという点。もうひとつはその止め金具の両サイドには、ベゼル操作のために金具を緩めたときにそれ自体がくるりと回転してしまわないように、両側にはそれを防止するための突起が設けられている点である。結果これによってネジを締めて固定したときには、さらに堅牢性が増すよう工夫されているというわけだ。
なお、航空兵のナビゲーションウオッチとしてアメリカ陸軍航空隊に調達された当時のタイプA-11といえば、どちらかというとウォルサムやエルジン製の秒針停止機構(通称ハック)が付いたものが主流だったが、このウィームス・セコンドセッティングウオッチは、計測を始める際に秒針を止める必要がないため実際の時刻に影響しないというメリットがあったようだ。