奨学金制度拡充の意義

 東京大学をはじめとする国立大学の学納金は文科省の省令で年間53万5800円と定められている。3月、慶応義塾長の伊藤公平氏が文部科学省の中央教育審議会大学分科会の「高等教育の在り方に関する特別部会」において、国立大学の学納金を現在の約3倍にあたる年間150万円程度に値上げするという提言を行い、物議を醸したことが記憶に新しい。伊藤塾長はその理由について「国公私立大学の設置形態に関わらず、大学教育の質を上げていくためには公平な競争環境を整えることが必要である」「私立大と短大は、公平な土壌で建学の精神に基づく経営努力に取り組むことができる」(部会への提出資料より)としているが、大手予備校関係者はいう。

「東大に進学する学生の世帯年収が他大学のそれと比較して高い傾向があるのは事実です。学歴という面では、子どもが小中学生の頃から高額な進学塾に通わせ、大学受験に強い難関私立高校に通わせるほどの経済力のある家庭にアドバンテージがあるのが現実です。その一方で、学費が安いという理由で、経済的に苦しい世帯の子どもが勉強に励んで国立大学に進むというケースが一定数存在することも事実であり、国立大学の存在が低所得世帯の子どもに高等教育への門戸を広げているという側面があります。国にとって学ぶ意欲があり学力の高い子どもに高等教育を受けさせることは将来の国益にかなうため、世帯年収の高低にかかわらず大学・大学院へ進学できる奨学金制度の拡充が必要です」

(文=Business Journal編集部、協力=小林雅之/桜美林大学特任教授)

提供元・Business Journal

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