私の中国論のモットーは「仮説と検証」です。秘密が多すぎてよく分からない中国について「こうだからじゃないか、ああなっているんじゃないか」と仮説を立てる、然るのちに日々伝わってくるニュースを題材にして、立てた仮説で腹落ちする説明ができるかどうかを検証する(上手く説明できないときは、仮説を廃棄する)。

今回「公研」に書かせてもらったこの小文も、最近温めている仮説の一つです。

この仮説で説明したいと考えているもう一つの題材は、福島の処理水排出に対する中国政府の非論理的、情緒的な反応です。

韓国が同調してくれない、EUに至っては、これまで課してきた日本食品の放射性物質検査を(中国から見ると)最悪のタイミングで撤廃すると発表しやがった…孤立を何より嫌う中国外交にとっては誠によろしくない展開だけど、逆風ももののかは、相変わらず全力でバッシングしてる…

私はこの反応の背後にも、意外や環境センシティブになった「体制内マジョリティ」が強く反発していて、専門家が「問題にならないレベルの放射能」「うちの原発も相当な量のトリチウムを排出してまして」とか迂闊に発言したらボコにされるムードがあるんじゃないかと疑ってます。

外交当局にとっても、今やいちばん大切なのは、外交相手国の反応より国内世論の反応だから、ああいう反応になる…そういう説明は説得力があるかしらん?(7月22日記)

編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2023年8月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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