プーチン氏はヒトラー暗殺未遂事件から学んだのだろう。自身の居所を絶対に漏らさないようにしている。自身の護衛隊にも土壇場まで言わないだけではなく、偽情報を教えることもあるという。ちなみに、プーチン氏の場合、医師、警備員、狙撃兵、フードテイスターがチームを編成し、常に大統領に随伴しているという(「『プーチン暗殺未遂事件』の因果」2022年5月28日参考)。
プーチン氏が「不安」に取りつかれている理由は明らかだ。5月3日未明、ロシアのクレムリン宮殿に向かって2機の無人機が突然、上空から現れ、それをロシア軍の対空防御システムが起動して撃ち落すという出来事があった。ウクライナ軍のドローンがロシアの対空防衛システムを簡単にくぐりぬけてモスクワのクレムリン宮殿まで飛んできたのだ。また、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏(62)による「24時間反乱」(6月23~24日)が起きたばかりだ。同反乱の背後には、ロシア軍内の幹部の関与も噂にになった。プーチン氏を取り巻く周囲はウクライナ戦争前には考えられないほど不安定になっているのだ(「プーチン氏『ハト派よりタカ派が怖い』」2023年7月23日参考)。
国際刑事裁判所(ICC、本部ハーグ)が今年3月17日、ロシアのプーチン大統領に戦争犯罪の容疑で逮捕状を出して以来、ICC加盟国の間では「どの国がプーチン氏を逮捕するか」で話題を呼んでいる。逮捕されることを恐れ、プーチン氏はその後、外遊を控えている。
ちなみに、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の次期議長国ブラジルのルラ大統領は9日、「プーチン大統領が来年のG20サミットに出席しても、わが国は逮捕しない」と明言した。ブラジルはICC加盟国だ。ルラ大統領の「逮捕しない」といった口約束を信じて、プーチン氏がブラジルまで飛ぶとは残念ながら現時点では考えられない。G20サミットにもプーチン氏は欠席し、ラブロフ外相を代理に送ったばかりだ(「猫(プーチン氏)の首に鈴をつける国は」2023年3月26日参考)。
ドイツ通信(DPA)は「ロシアで密告が復活」という見出しの記事(5月16日)を配信したが、ロシアがイギリスの小説家ジョージ・オーウェルの小説「1984年」のような状況になってきているのだ。あれもこれも全て、自身に差し迫ってきた「不安」を追い払うためだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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