年収1000万円と1799万円は同じ税率、住む場所も関係か

 税金や社会保険の差し引き額が少なくなく、手当などの支給も対象外になりやすい年収1000万円クラスだが、国の制度設計はどうなっているのか。

「国は年収1000万円以上の世帯ではないと、十分に税金を取ることができないという設計思想の下で制度を作っていると考えられます。日本人の年収別の割合を見てみると、年収700万円以下の割合が、全体の85.8%とかなり大きい人口ボリュームとなっています。政治家としては選挙の得票を考慮し、なるべく彼らを敵には回したくありません。したがって国の制度では、年収700万円以下までの税収を低く見積もり、代わりに年収1000万円以上の世帯から大きな税収を得ようとする傾向にあります。

 代表的なのが、所得税の累進課税率でして、具体的に見ていくと195万円から329万9000円までは税率が10%、330万から694万9000円までは税率が20%、695万円から899万円9000円までが23%となっています。しかし、900万円から1799万9000円までとなると税率は一気に33%と上昇。累進課税率を見るに、国が年収900万円、ないしは1000万円以上の税収を充てにしていることは明白です。また大企業における平均年収も1000万円を超えることが珍しくなくなってきていることから、彼らを基準として各種手当や制度の所得制限を設けている節もあるでしょう」(同)

 年収694万9000円までの税率は4段階あるが、1段階あたりの収入の開きは130万円から360万円ほどだ。対して、年収1000万円が該当する税率33%の年収幅は約900万円となっており、収入の開きが目立つ。高収入であればあるほど収める税金が増えるとはいえ、税率33%の層は最高で900万円近くも上の年収帯と同じ税率であること、下の段階の収入の開きが比較的小さいことを踏まえると、納得できない人も多いかもしれない。

 こうして見ると、年収1000万円世帯は貧乏くじを引かされていると思ってもおかしくはない。たしかにセレブのような生活を送るのは難しいかもしれないが、彼ら・彼女らが不満を叫ぶ背景には住む場所も関係してくるという。

「ネット上の意見を拝見しますと、年収1000万円で生活が苦しいと訴えているのは、土地代、物価が高い地域に住んでいる方々が目立ちます。都内で言えば港区や渋谷区、世田谷区のような地域が該当しますね。そうした地域に住んでいて、なおかつ子どもを私立高校に通わせようとすると、残ったお金で上流階級的な生活を送ることは難しいかもしれません。もし少しでも優雅に暮らしたいと考えるのであれば、より土地代や物価が安い地域に引っ越しましょう。通勤や子どもの通学時間が伸びるなど懸念点はあるものの、八王子や立川など西東京のほうに引っ越せば、だいぶ生活水準を上げられるはずです」(同)

(取材・文=A4studio、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

提供元・Business Journal

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