静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR
(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

■上品すぎず下品すぎず“最高の酒場”の在り方

BARTENDER
田中 利明さん(バーテンダー歴34年)

静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR
(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

小さな看板を目印に「カエサリオン」のドアをくぐると、深い闇に包まれた。店内は黒一色。わずかな灯りに浮かび上がるバックバーを背に、オーナーバーテンダーの田中利明さんが迎えてくれる。

日本を代表する名バーテンダー上田和男氏のもと資生堂パーラーの「バー ロオジエ」で修業を積んだ田中さんは、平成5年(1993)に独立。まだ飲食店の少なかった代々木上原に店を構えた。

以来30年、田中さんの作る酒は、イラストレーターの故・安西水丸氏をはじめ、多くのバーファンに愛されてきた。

静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR
(画像=さりげないグラスさばきに、卓越した技が光る。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

BGMは流さず、冷蔵庫もない店内は静謐そのもの。酒以外を削ぎ落とした店づくりは、一見、スタイリッシュだが、「決して〝格好良い〟店にしたいわけではない」と田中さん。

黒一色の内装も居抜きで借りた喫茶店の劣化を隠すため、自身で塗ったものだという。

静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR
(画像=バックバーのボトルの並べ方には、その店の個性が出るという。、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

「書道でも画数の少ない方が難しいといわれますが、カクテルも似ています。組み合わせが少なくて、それでいて完成度が高いものが良い」と話す田中さんが、「寒くなると琥珀色のカクテルが増えるかなあ」と勧めてくれたのはハンター。

ライウイスキーとチェリーブランデーのシンプルなスタンダードカクテルだ。漆黒のバーカウンターに琥珀色の輝きが映える。

「チェリーブランデーには媚薬効果があるといわれています。『ハンター』という名前は、まあ、そういうことです」と微笑む。

そんなさりげない会話の一つひとつに、長年、バーカウンターに立ち夜の街の移ろいを見てきた田中さんの懐の深さを感じる。

静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR
(画像=シンプルな店内唯一のインテリアは、客が持ち込んだ本や雑誌が並ぶ書棚。,『男の隠れ家デジタル』より 引用)

「開店当初は、今みたいに紳士淑女はいませんでした。お客さま同士の喧嘩はしょっちゅうだし、トイレが汚れることも多かった。変わってきたのは2000年代に入ってから。仕事はしやすくなりましたが、あまり健全すぎるのもね。酒場は上品すぎても、下品すぎてもだめ。その辺の糊代は残しておきたいんです」と田中さん。

ここ数年は若い客も増えたというが、「酒場での振る舞いを少しずつ覚えて、格好良い客になってほしいですね」と話す田中さんは、取材中、「所詮、酒場だから」と繰り返した。

けれど「最高の酒場にしたい」と続けた田中さん。その姿は無性に格好良かった。

静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR
(画像=わずかな灯りのもと、漆黒の店内に純白のバーコートが浮かび上がる。,『男の隠れ家デジタル』より 引用)

■冬の一杯

ハンター (1700円)

静謐で漆黒の空間に輝く一杯「カエサリオン」(代々木上原)|カクテルを愉しむBAR
(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

カナディアンライウイスキーとチェリーブランデーをステアしたシンプルなショートドリンク。ライウイスキーの力強さに、チェリーの甘い香りが漂う。

カエサリオン
東京都渋谷区上原1-33-16
TEL:03-3485-2907
営業時間:16:00~23:00
チャージ:800円 席数:10席
定休日:日曜
アクセス:東京メトロ「代々木上原駅」より徒歩2分

文/田端広英 撮影/米屋こうじ

提供元・男の隠れ家デジタル

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