映画「卒業」の名シーンが忘れられない
イタリアの名門、アルファロメオは伝統的に、スパイダーと呼ばれるオープン2シーターをラインアップに加えてきた。その中で、約30年にわたり現役を務めたロングセラーがジュリア・シリーズ(105系、1962年登場)をベースにしたスパイダーである。105系スパイダーのデビューは1966年だった。
ピニンファリーナ・デザインのスタイリングは、風洞実験を経て生み出されたもので、中央部を凹ませたボディサイドや、「ボートテール」と呼ばれるラウンディッシュなリアエンドが目を引いた。アルファロメオはスパイダーの発売に当たり、ニックネームを公募。デュエット(二重奏)が選出された。初期型モデルはスパイダー・デュエットと呼ばれた。
パワーユニットは、伝統の直列4気筒DOHC。排気量は当初1.6リッターで、翌1967年には1.8リッターに拡大され、1750スパイダー・ヴェローチェとモデル名を変える。続く1968年には1.3リッターエンジンを積む1300ジュニアを追加。そして1969年、ボディのリアエンド形状を、空力特性により優れたコーダトロンカ・スタイル(切り落とされた尻尾の意味、英語ではカムテールと表記)に一新する。
1971年にエンジンが2リッターに拡大され、2000スパイダーが登場する。一方、1972年には1.6リッター仕様が再登場。1979年に1300ジュニアが姿を消した。 スタイリングは、1983年に一部変更を実施し、大型バンパーやスポイラーを装備。1990年にはボディ同色樹脂製バンパーを備えた最終型に進化する。最終型は5速MTに加え、3速ATをラインアップ。1993年まで生産が続けられた。
取材車は1967年式の正規輸入車。150psを発生する2リッターエンジンを搭載する。真紅のボディのコンディションは上々。ボディサイドには、アルファのレーシングチームを象徴する「クアドリフォリオ(四葉のクローバー)」のステッカーが貼られ、ホイールは1960年代のレース用マグネシウムホイールと同デザインのレプリカ品を装着する。
メカニズムは絶好調。エンジン/ミッション/デフはOH済み。特注のステンレス製マフラーが奏でる豪快な排気サウンドをBGMに、スポーティな走りが満喫できた。ステアリングはパワーアシスト機構未装備だが、据えきり時を含めさほど重くない。スパイダーの個性は、美しいスタイリングと胸のすく走りにある。