<公営住宅の中庭からから見上げるアングル。彼方に望む青い空、差し込む光、思わずハッとするようなショット。>
香港には250あまりの公営住宅があります。その無機質で画一的、それでいて唯一無二で独特なアート空間は細部に至るまで、とても不思議な魅力を醸し出しています。最近では流行に敏感な香港の若い人たちからもインスタ映えするフォトジェニックなスポットとして注目されています。今回は、そのなかから独断と偏見で選んだ公営住宅を紹介させていただきます。
目次
香港の公営住宅について
世界屈指の「家賃が高い都市」として知られている香港では、約330万(人口の約45%)の人たちが、香港政府が建設した公営住宅に住んでいます。この公営住宅の本格的な建設が始まったのは、中国からの大量の移民が香港に住み始めた1970年代後半と言われています。格差社会が広がる香港ではお金持ちはごく一部で、そのほとんどが中間層以下で人口が構成されており、彼らは比較的家賃の低い、築30年以上の公営住宅に住んでいます。
彩虹邨(Choi Hung Estate)
<グランドのバックにカラフルな色彩が映える彩虹邨。そこでは老若男女がそれぞれの時を過ごしている。>
彩虹邨は1962年から1964年にかけて建設された「香港で最も美しい公営住宅」として知られています。香港建築委員会によって開発され、デザインにはバウハウスの要素が組み込まれています。
そのユニークなデザインにより、1965 年には香港初の建築賞、香港建築家協会の年間最高の栄誉である銀メダル賞を受賞しています。また最近では韓国の男性K-POPグループSEVENTEENが香港で撮影した「Check-In」という曲のミュージックビデオに登場したことでも話題となりました。
彩虹邨
- 住所:Ngau Chi Wan, Kowloon, Hong Kong
華富邨 (Wah Fu Estate)
<雄大な山々をバックにしたショット>
<住宅にある広々とした広場>
<50年以上の歴史を持つ銀都冰室>
華富邨は香港島南部にある公営住宅です。1期と2期に分かれており、1967年から1978年にかけて建設されました。この公営住宅には香港島南岸にあるアバディーンの漁港やレジャースポットであるラマ島などの離島が望める広場があり、昔から変わらない美しい景色を楽しむことができます。また敷地内には50年以上の歴史を持つ食堂、銀都冰室があり、レトロなペーパーストーンの床とレンガの壁が今も残されています。
華富邨
- 住所:Waterfall Bay, Pok Fu Lam, Hong Kong
葵盛西邨(Kwai Shing West Estate)
<住宅のサイドからのショット。美しいフォントでデザインされている。>
<美しい構図と造形でデザインされた住宅>
香港政府が建設した低家賃公営住宅のひとつで、新界の葵涌地区にあり、葵盛東邨および葵盛西邨の2つの部分に分かれています。葵盛西邨は 1972年から 1973年にかけて建設され、葵盛東邨は1977 年4月に完成しました。ここで取り上げた葵盛西邨はシンプルなデザインでありながら、その美しい造形は圧倒的な迫力を持っており、個人的にも推しの公営住宅のひとつです。
葵盛西邨
- 住所:Kwai Shing West Estate, Kwai Shing Circuit, Kwai Chung
禾輋邨(Wo Che Estate)
<中庭から棟を望む>
<住宅棟の中庭から望む上空>
<中庭にある中国将棋のコマのようなベンチ>
禾輋邨は隣接する源歴邨に次いで1977年から1980年にかけて沙田地区に建設された公営住宅です。自宅から徒歩圏内にあることもあり、よく散策する馴染みのエリアです。どこか懐かしく人間味にあふれており、心癒される公営住宅です。
禾輋邨
- 住所:Wo Che Estate, Shatin, New Territories, Hong Kong
まとめ
香港政府は今年、ここで紹介した彩虹邨の建て替えを決定しました。虹色の色彩がシンボルの公営住宅ですが、老朽化が激しいことから建て替えが決まったようです。
そのためか、ここ最近はそれを惜しんで、さらにたくさんの写真好きの香港人たちが集まって撮影しており、その一部はSNSにもアップされています。ちなみにこの彩虹邨ですが、建て替え後は40階建てに生まれ変わるようで、現在のようにカラフルな外観となるかどうかは発表されていません。
彩虹邨だけでなく、現在、このように老朽化を理由に建て替えもしくは封鎖される公営住宅が後を絶ちません。とても悲しいことですが、そこに住んでいる人たちがよりよい環境で生活するためには、必要なことなのかもしれません。
それであれば、せめて建て替えまでの残された時間、昔の面影を残す美しい公営住宅の魅力を多くの人たちに感じてもらいたいと思っています。そして、それは香港好きのみならず、写真好き、建築好き、さまざまな人たちを虜にすることは間違いないでしょう。
ぜひ、香港に旅行に来られた際には、グルメと夜景、買い物だけではない、一味違った香港を楽しまれてはいかがでしょうか。
文・写真・H.Kawa/提供元・たびこふれ
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