コストパフォーマンス(費用対効果)やタイムパフォーマンス(時間対効果)を気にするようになると、確かにお金や時間を有効に使えるようになる。
しかし、コスパ思考やタイパ思考を極めすぎると、本当の意味での「豊かな人生」を送りにくくなる。
豊かな人生を送りたいなら、こうした思考は今すぐやめるべきだ。
コスパやタイパは「自分本位」の考え方
よく考えてほしい。コスパやタイパは「自分本位」の考え方だ。
コスパは自分にとってより少ないお金で大きな効果を得るという考え方であり、タイパは自分にとってより少ない時間でより大きな満足を得ようという考え方だ。そこでは「他人」という存在は意識されない。
こうした自分本位の考え方を徹底的に極めすぎると、他人のことはどうでも良くなりがちだ。しかし人生の豊かさや幸せは、他人との温かい人間関係の中で育まれることが少なくないということを、改めて意識したい。
お金を節約することを意識しすぎて誰かを励ますためにお金を使わなかったり、自分の自由な時間を増やすために家族や友人の悩み相談を聞いたりしなくなると、温かな人間関係が築きにくい。
そうすると将来的には、一人で寂しい老後を過ごすことになるかもしれない。
一見無駄なことが価値を生むことも
また、コスパやタイパは「経験」を重ねることで磨かれていくが、過去の経験にとらわれすぎると、新しいものへの理解が進みにくくなる。
たとえば、スーパーで安くて使い心地もよいティッシュペーパーを見つけ、その商品を買い続けるとする。盲目的にその商品を買い続けると、結果として新発売されたティッシュペーパーの存在に目が向かず、結果としてあなたは流行に乗り遅れてしまう。
またコスパ思考は精神面に悪い影響を与える可能性がある。コスパ主義者が最も嫌うことの一つに「衝動買い」がある。衝動買いの多くはコスパを気にせずに行われるためだ。しかし、衝動買いによってストレスが発散されることもある。
コスパを重視し過ぎて、結果的にストレス過多でメンタルを病んでしまうなんてことは、絶対に避けたいところだ。健康はお金を払っても買えない。
タイパを重視する人は、何気ない雑談やあまり気が進まない飲み会などを毛嫌いするケースが多い。しかしこうした一見無駄に感じる時間を過ごす中で、あなたの仕事に活きるような新たな発想・アイデアが生まれることもある。
自分とは異なる考え方に触れ、価値観や視野が広がることもある。タイパを重視し過ぎると、こうした可能性の機会を逃しがちになる。
人生は「損して得とれ」
人生は「損して得とれ」だ。コスパやタイパを重視して目の前のお金や時間に執着し過ぎて、結果的に豊かな人生を送れないということにならないよう、注意しよう。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。