とある取材で香港を訪れた。コロナ後初の海外渡航。ほぼ4年ぶりの訪問でちょっとした浦島太郎気分だ。始終きょろきょろしながら過ごしたのだが、一番驚いたのは物価の高さだった。欧米が高いというのは聞いていたが、香港も例外ではなかった。滞在最終日、まずは香港駅で荷物を預け、近くの中環(セントラル)付近をぶらぶらすることにした。昼食時をだいぶ過ぎてはいたが、行列が絶えない麺屋「三多麺食」を発見。遅めの昼食はここに決めた。10分ほど並んで通されたのが小さな円卓の5人席。もちろん相席だ。大体みな同じような感じで食べている。ワンタンが名物のようだったが、気分じゃないので牛肉麺を頼んだ。44香港ドル。その時は何も考えずに注文したが、落ち着いてみれば結構なお値段。1香港ドル19.3円として、850円ほど。感覚的にこの麺なら4~500円といったところだ。これも円安の影響だ。味は薄味で可もなく不可もなく。自家製という特製ラー油を入れるとまあまあの味になった。
三多麺食を出て、食後のコーヒーが飲める店を探した。コーヒーの香りが漂う、やたら人が多い店があったので入ろうかと思えば、そこは「ブルーボトルコーヒー」の香港1号店。ちょっと面白みに欠けるので、地場の店を探してさらに歩くと、何とかCAFEと書いてある店を発見した。ここならうまいコーヒーが飲めそうだ。入店してオーダー。コーヒーだけでは寂しいので、ちょっとしたデザートとして、アイスクリーム付きのクレープも一緒に頼んだ。コーヒーはかなりの薄味だったが、クレープは絶品。店名をよく見ると、「Cafe Crepe」とある。うまいはずだ。しかし、お値段は190香港ドル。およそ3700円。ううん。これは高い。日本なら高級ホテル価格だ。
今回の滞在で行ってみたい場所があった。西九龍文化地区だ。九龍半島の南西の海に突き出すエリアで、芸術と文化の発信地としてこの数年で急速に変貌を遂げてきた。「香港故宮文化博物館」、モダンアートの美術館「M+」、「戯曲センター(Xiqu Centre)」などが隣接している。一番写真映えのする戯曲センターは見落としてしまって、心残りなのだが、美術館のM+も、とても素晴らしい建物だった。地下鉄の九龍駅からはちょっと歩く。迷いながらもやっとM+にたどり着くとのどが渇いてきた。美術館の海側にレストラン「ADD+」があった。
せっかくなので、外のテラスで海を見ながらビールを飲むことにした。おしゃれな美術館だけに、銘柄はイタリアの「Peroni Lager」だ。値段は75香港ドル。400mlグラスで1500円ほど。輸入ビールと場所柄を考えるとギリギリ妥当な線かも知れないが。やはりちょっと高い。エリアをぐるっと回って、香港故宮文化博物館に着くと、横から九龍駅行きのシャトルバスが出ていた。5香港ドルで100円ほど。これはまあ妥当な価格か。
だいぶ歩いて疲れてきたので、ちょっと早いが空港に移動することにした。ここでも行ってみたい店があった。香港国際空港の制限エリア内にある「CAVIAR HOUSE & PRUNIER」。その名の通りキャビアが楽しめる店だ。カウンターで10席ほどの小さな店だが、帰る前にちょっとシャンパンとキャビアというのをやってみたかった。銘柄は忘れたが、グラスシャンパンが1杯180香港ドル。キャビアとウニのミニサラダが190香港ドル。しめて370香港ドルは、日本円で7100円ほど。これにも驚いた。キャビアといってもほんのちょっと。ウニにぱらぱらかかっているだけだ。空港ラウンジなどが利用できるプライオリティーパスが利用できる店舗にもなっていた。パスがあるので、使ってみたかったというのもあった。それでも200香港ドル割引になるだけなので、結局3300円ほど支払うハメになった。空港価格なので、しょうがない面もあるが、これは高すぎる。
香港国際空港の制限エリア内には無人コンビニもある。興味本位で入ってみた。クレジットカードを差し込んで暗証番号を打てば、ゲートが開いて入店。あとは勝手に商品を取って出るだけで課金される仕組みだ。買ったのは、日本のコンビニだと150円ぐらいの缶コーヒー。これが25香港ドルと500円弱だった。空港、全自動コンビニ、円安のトリプルパンチでここまでの価格になってしまうわけだ。深夜便の搭乗だった為、やがてラウンジも追い出され行き場を失ったのだが、24時間営業のマクドナルドがあった。海外でマクドナルドといえば、やっぱりビッグマックだ。大体どこの国でも中身が同じなので、物価指標の一つとして使われることがある。ここで頼んだビッグマックはなんと23.5香港ドル。450円ほどで、ほぼ日本と同じだった。ここまでさんざん物価高にやられてきただけに、これも逆に驚きだった。香港で食事の高さに参ったら、マクドナルドに駆け込むのがいいかもしれない。(BCN・道越一郎)
提供元・BCN+R
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