雪女にまつわる民話や伝承は、日本各地に散見される。雪ということから、寒さの厳しい東北をイメージするかもしれないが、関東や東海、果ては九州にまで雪女伝承は存在しているという。このことは、かつて日本、いや地球規模で小氷期いわばミニ氷河期と呼ばれた期間(14世紀~19世紀半ばごろと言われる)が存在し、日本全体が寒く積雪が当たり前だったことを物語っていると言えるだろう。

 雪女あるいは雪女に類する妖怪の中で、現在の長野県諏訪地方に伝わる「しっけんけん」と呼ばれる妖怪がいる。しっけんけんは、別名「雪降り婆」(ユキフリババア)とも呼ばれる妖怪であり、一本足で雪上を飛び跳ね、遭遇してしまうと縄や紐で縛り上げられてしまうという恐ろしく攻撃的な存在だ。

 通常、我々が思い描く雪女のイメージとは異なっていると思われるかもしれない。名前にある「けんけん」が一本足であることを示していることは容易に想像がつくだろうが、特にこの一本足という点は奇妙に思われることと思う。しかし、一本足の雪にまつわる妖怪はいくつか例が見られる。

 明治ごろに描かれたと言われる著者不明の『ばけもの絵巻』には、愛媛県北宇和郡などに伝わるという雪上に一本足の足跡を残す妖怪「雪婆」(ゆきんば)が紹介されており、女性の大きな顔から二本の腕と一本の足が付いている、一本ダタラのような挿絵が描かれている。

一本足の雪女?妖怪「しっけんけん」出遭った人を縛って動けなくしてしまう?!
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

 また柳田國男は、雪の降る明け方に目が1つで足が1本の大入道が現れるという、岐阜県高山市の住広造の報告を「一目小僧」の中で言及している。同県の郡上(ぐじょう)市には、雪上に大きな足跡を残す「雪入道」の伝承が残っていることから、それに類した妖怪であるのかもしれない。

 この通り、雪に一本足として描かれる雪の妖怪は意外と存在している。これは、四足動物、特にキツネに代表されるような前足跡の上に後足を重ねるという歩行の仕方によって残る一直線に足跡が、まるで一本の足跡のように見えることから連想された可能性が高い。「しっけんけん」が一本足の妖怪となっているのも、おそらくこうした現象に由来しているのではないだろうか。では、縄や紐で縛り上げるというのはどういうことか。当然、そんなもので縛り上げられ身動きが取れなくなってしまっては、雪の中で凍えてしまい最悪命を落としてしまうことは必至だ。いや、逆に言えば、そうして凍てつく寒さに身動きが取れなくなってしまうという身体的状態を、「体を縛られる」という形で表現したものである可能性も考えられるだろう。

【参考記事・文献】
小松和彦・常光徹『47都道府県・妖怪伝承百科』

【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】

文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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提供元・TOCANA

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