ユニバーサルサービスの定めを残しながら郵便事業を維持するための抜本的な改革

 郵便事業の黒字化は可能なのか。

「郵便事業は人件費率が高いため合理化・効率化が難しく、黒字化は相当難しいと考えられます。郵便事業は公企業でも株式会社なので赤字が続けば破綻せざるを得ず、かといって税金で補てんすることも難しいです。黒字化のためには大幅に人件費を削減する必要がありますが、たとえば配達の頻度を週2回くらいにしてポストの数も減らすことで、人件費を削減することは可能です。サービスは低下することになりますが、郵便事業を完全になくすことができないのだとすれば、やむを得ないという判断もあるでしょう。これらの取り組みは郵便法を改正すれば可能ですし、郵便法上のユニバーサルサービスの定めを残しながら、なんとか郵便事業を維持するための抜本的な改革を検討すべき時期にきています。

 ただ、こうした法律の改正では行政により抵抗も予想されます。かつて信書の送達事業について民間事業者の参入を可能するために信書便法が制定される際、私がヤマト運輸の経営者に直接話を聞いたところ、約1000通を一つの定型パックに同封することで東京から札幌の配達拠点まで1通あたり1円のコストで送れるということで、参入に前向きな姿勢を示していました。ですが総務省は日本郵便の既得権益を守るために、事業を手掛ける民間事業者に対して郵便ポストと同数レベルのポストを設置して、かつ毎日回収することを義務付け、新規参入が事実上できないようにしました。結果的にヤマトは参入を断念し、現在でも信書便事業を行う事業者は事実上、日本郵便以外ありません。

 こうした法律を改正して民間事業者の参入が増えれば、新たなマーケットやサービスが生まれ、結果的に日本郵便の事業拡大にもつながる可能性もあるのではないでしょうか」(松原氏)

(文=Business Journal編集部、協力=松原聡/東洋大学教授)

提供元・Business Journal

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