2022年頃までは深刻だった半導体不足が、昨年から徐々に解消に向かっている。「2024年問題」(供給過剰)が懸念されていた今年は、場回復への転換期となりそうだ。今後は需要と供給がともに増加する好循環が期待され、2025年にはさらに力強い回復が見込まれる。
Grand View Researchによると、世界の半導体市場は2024年から2030年にかけて年平均7.9%で成長し、2030年には1752億ドルに達する見込みだ。一方で、半導体の製造プロセスには課題も残っている。微細な構造をもつ半導体チップには精度の高い検査が求められるが、従来の技術ではナノスケールの欠陥や異常を見逃す可能性がある。
そこで注目を集めているのが、オランダの研究機関から誕生したスタートアップNearfield Instrumentsによる半導体製造向けの計測技術だ。
オランダの研究所から誕生したスタートアップ
Nearfield Instrumentsはオランダ応用科学研究機構(TNO)から派生した企業だ。TNOは科学技術の応用研究を行っており、その一部として半導体の検査技術を開発していた。こうした技術を商業化するため、2016年にNearfield Instrumentsが設立された。オランダ第二の都市ロッテルダムに本社を構え、韓国・華城市にも2021年に設置した開発拠点を有する。
7月18日には、シリーズCにて1億3500万ユーロの資金調達を発表。複数の著名な投資家の主導によるラウンドで、Nearfield Instrumentsの将来性と技術力の高さが評価された。今回の資金調達は欧米の半導体製造装置市場において過去5年間で2番目に大きな規模とされている。同社共同設立者兼CEOであるHamed Sadeghian博士は、「今後10年間における計測・検査需要の増大に対応できる体制を整えている。(中略)半導体装置業界における重要なプレーヤーとしての地位を強化する」とコメントした。
最先端「非破壊」検査で半導体内部を測定、問題を早期発見
Nearfield Instrumentsの検査装置には、QUADRAとAUDIRAという2つの主力製品がある。
AUDIRAは、半導体の内部構造を壊さずに検査する装置で、いわゆる「非破壊」検査を行うもの。X線検査や超音波検査のように、内部をスキャンして欠陥や故障部位を特定することができる。
一方のQUADRAは、半導体の「表面」を高い精度で測定する外観検査装置である。光を使ってチップの表面をスキャンし、非常に小さな欠陥や異常を見つけることが可能だ。7月9日に発表したリリースによると、従来のシステムと比べて画像処理速度は160倍以上を誇るという。