世界の電子書籍市場は2027年までに153.3億米ドルに成長し、読者数は11億人に達すると予測されている。昨今は出版社だけでなく、個人が電子書籍を出版するケースも増えており、クリエイターの新たな収入チャンスの場としても関心が高まっている。
一方で、書籍の制作にかかる時間や労力コストは無視できない。複数のツールを並行して使いながら、効率改善を模索するケースも少なくないだろう。
こうしたなか、7月24日、香港拠点のデジタル出版ソリューションプロバイダーであるFlipHTML5は、AI電子書籍作成ツール 「AI ebook creator」を発表。
電子書籍の制作プロセスを一つのツールにまとめ、簡素化することで、世界中のユーザーがデジタル出版への道をさらに切り開いていくことを後押しする狙いだ。
AIライティング、テキストから画像に変換する機能を搭載
FlipHTML5は雑誌、パンフレット、カタログなどのデジタル出版物を作成・公開するプラットフォームを提供している。同プラットフォームにはビデオ、音声、アニメーションなどのマルチメディア要素を追加する機能をはじめとしたさまざまなオプションが用意されているため、複数のツールを使いこなす必要がなく、洗練されたプロフェッショナルなコンテンツを一か所で作成できるとしている。
今回、FlipHTML5のプラットフォームに追加された「AI ebook creator」は、ユーザーが手間をかけずにより魅力的な電子書籍コンテンツを作成できるように支援するツール。テキストの書き直し、磨き上げ、翻訳、テキストからの画像生成などの機能を搭載しており、書籍の作成にかかる時間と労力を削減する。
AIライティング機能では、1回のクリックで表現の強化や文法ミスの修正、メッセージに合わせたトーンの調整が可能。より洗練された文章で、読者を魅了する電子書籍を作成できる。 テキストから画像に変換する機能では、入力されたアイデアにもとづいて画像を瞬時に生成するため、画像の検索や作成にかかる時間の節約につながる。画像はフリップブック(ページをパラパラとめくる動きをする、Webサイト上のアニメーション)にシームレスに統合。書籍に視覚的な楽しさが追加され、全体的な魅力も高まる。
AIチャットボット装備でインタラクティブ性をプラス
ユーザーは、同プラットフォームをつうじてPDFファイルをオンラインで共有したり、webサイトに埋め込んだりすることができる。アップロードしたPDFにAIチャットボットを装備する機能を活用すれば、読者はコンテンツとチャットすることが可能に。24時間、年中無休で正確な応答を実現し、コンテンツにインタラクティブ性をプラスできる。こうした機能のほか、アイデアを入力するだけでAIジェネレーターがユニークな電子書籍を素早く作成する機能も近日公開予定だ。
公式サイトの画像には「この電子書籍のトピックはファッション家具カタログです。全部で6ページあります。電子カタログを作成してください」という文字がチャット欄に入力され、その指示に沿うようなカタログが生成されている様子がうかがえる。こうした高度なAIアルゴリズムによってワークフローがより効率化されそうだ。(文・Haruka Isobe)