初の水素電動によるリージョナル・ジェットに秘めたる可能性

 MHI RJは、2021年10月に水素燃料電池による電動航空機の開発を目指す英国(および米国)のゼロアビア(ZeroAvia)社と技術提携契約を結んだ。同社は水素燃料電池が発電する電力でプロペラやファンを回し推力を得る水素電動エンジンを開発中であり、まずターボプロップ機に装着し実用化した後、将来的にCRJ型機のジェットエンジンを新型エンジンZA 2000RJに換装し世界初の水素電動リージョナル・ジェットを実現するという構想を持っている。MHI RJはCRJの型式証明の保有者として、データ提供、技術協力、また技術認証取得のためのサポートを行う立場である。

 2021年末にユナイテッド航空はゼロアビア社への資本参加を決め、また自社のCRJ550型機(50席)に装着するために、最大100基のZA2000RJ水素電動エンジンを購入する覚書を結んだ。さらに、2022年8月にはアメリカン航空も同様に投資する決定と、最大100基のZA2000RJ水素電動エンジンを発注する権利を約束する覚書を結んだ。民間航空のカーボン・ネット・ゼロに向けて、エアラインのCRJ水素電動化への期待は大きい。

 ターボプロップ機ならまだしも、水素燃焼型エンジンに比べ推力が小さい水素電動エンジンでリージョナル・ジェットを飛ばすことは技術的ハードルが非常に高く、実現には時間を要し、実現できるとしても2030年代以降と考えられる。しかしながら、もし実現できれば、CRJ型機に新たな命が吹き込まれることになり、また、エンジンの換装で、MHI RJにはビジネスチャンスとなるに違いない。

MSJ開発失敗の遺産…三菱重工、世界の航空機運航を支える大きなビジネス展開
(画像=水素電動化したCRJ700の想像図 出典:ゼロアビア社,『Business Journal』より 引用)

M&AによりMHI RJの更なる事業拡大へ  MHI RJは、アグレッシブに事業規模の拡大を行い、民間航空での存在感を高めようとしている。特筆すべきは、同社は「ただ漫然と本業の成長を待つだけでは、大きな事業規模拡大は望めない」との認識の下、事業の多様化と新たな能力獲得のために、M&A(企業の合併・買収)を活用して事業を拡大し、ゆくゆくは航空総合メーカーとして生き残りを図ろうとしている点である。

 ホンダの米国子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company)がホンダジェットを開発・製造したように、いつの日かMHI RJがM&Aにより民間航空機の開発・製造の能力を獲得した上で「Mitsubishi(三菱)」の名を冠するジェット旅客機を開発・製造する日が来るかもしれないと考えるのは、期待が過ぎるというものであろうか。

(文=橋本安男/航空経営研究所主席研究員、元桜美林大学客員教授)

提供元・Business Journal

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