一般の人に対して時事問題をどのように説明するか、何を伝えればアピールが高まるか、そして彼らが好む人物像というのもよく把握しているのです。

小池氏は怒鳴ることはなく、常に柔らかい語り口でとても説得力がある口調です。かと言って押し付けがましい声でも態度でもなく聞いていてとても心地が良いのです。

この雰囲気は大企業で長年管理職や幹部をやっている優秀な年配の女性にとてもよく似ています。そういう方は若手の人や中堅の人のためにこっそりと裏で根回しをしてくれたりしているのです。

また小池氏は動画でお母様の着物をリサイクルして洋服にして着ておられるということを説明されていましたが、これもまた非常に効果的なアピールです。

少なからぬ有権者には、高齢の両親がいたりすでに他界していたりしますが、家には親や親戚の来ていた着物や持っていたものがたくさんあります。

そして小池氏が動画を撮影していた場所は清潔感はありますが、決して華美ではなく、かと言って今風の意識高いインテリアだらけの部屋ではありません。そういうところもよく考えられているなと感じました。

このような共感力を呼ぶアピールは、ゴム長靴を履いて田んぼに入っていった田中角栄元首相を彷彿とさせるものがあります。

田中角栄元首相 首相官邸HPより

選挙もビジネスも、基本は有権者やお客様の共感力を得ることです。

つまり有権者やお客様が何を考えどう感じているかということをよく理解しなければなりません。

特に消費者ビジネスをやっている方には非常に重要です。マーケティングの教科書やMBAをやるよりも小池陣営が一体何をしていたかということを観察してみると学ぶことは多いと思います。

やはり思い出がありますから簡単に処分することもできない。そういったものをリサイクルして日常生活に活かすという小池氏に共感する方は多かったでしょう。

 

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