チンパンジーがゴリラを襲撃、子どもを殺害

研究チームのララ・M・サウザン氏は、2019年に初めて観察した襲撃事件をこう振り返ります。

「最初は、チンパンジーの鳴き声だけにしか気づかず、近くに住むコミュニティ同士が遭遇しているだけだと思いました。

ところがその直後、ゴリラに特有の胸を叩く音が聞こえ、様子が変だと気づいたのです。

観察してみると、チンパンジーの群れと5頭のゴリラのグループが遭遇し、互いに牽制し合っていました」

両者のにらみ合いが1時間ほど経ったあと、チンパンジーが群れでゴリラを攻撃し始めたのです。

チンパンジーによるゴリラ襲撃は2度観察され、遭遇時間は1度目が52分、2度目が79分。

その中で、成熟したオスとメスのゴリラ数頭は逃げ切りましたが、2頭の子どもがチンパンジーにより殺害されました。

ロアンゴ国立公園のチンパンジー
ロアンゴ国立公園のチンパンジー / Credit: LCP, Lara M. Southern–First lethal attacks by chimpanzees on gorillas observed

襲撃の原因について、デシュナー氏は「ロアンゴ国立公園では、チンパンジー、ゴリラ、マルミミゾウが食料資源を共有しているため、2つの類人猿の間で競争が激化し、それが致命的な争いに繋がったのかもしれません」と推測します。

また、ガボンの他の熱帯林でも報告されているように、近年の気候変動により、食料資源が減少しています。それが争いを引き起こした可能性もあり得るでしょう。

野生のチンパンジーはアフリカにのみ生息しますが、世界には賢い霊長類がたくさんいます。

このまま森林破壊が進めば、彼らがどんどん町に降りてきて、人間の物資を奪いにくるかもしれません。

※この記事は2021年7月に公開のものを再掲載したものです。

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参考文献

First lethal attacks by chimpanzees on gorillas observed
https://www.mpg.de/17223684/0719-evan-lethal-attacks-by-chimpanzees-on-gorillas-observed-150495-x

元論文

Lethal coalitionary attacks of chimpanzees (Pan troglodytes troglodytes) on gorillas (Gorilla gorilla gorilla) in the wild
https://doi.org/10.1038/s41598-021-93829-x

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?