リハビリテーション(以下、リハビリ)は公的医療保険でも保障される治療方法の1つだが、民間医療保険でも保障対象になるのだろうか。公的医療保険によるリハビリ治療の保障について触れながら、民間医療保険の保障範囲について確認したい。

リハビリは公的医療保険の対象になる

リハビリは身体的な機能回復のために行われる運動療法というイメージを持つ人が多いかもしれないが、それだけではない。リハビリは単なる機能回復だけではなく、社会で自立した生活が送れるようにするすべての活動を指している。その方法は、理学療法、作業療法、言語療法の3種類に分かれる。

理学療法は病気やケガでの運動機能低下に対する治療だ。主には、立つ、歩く、座るなど基本的な動作能力を高めるために行われる。作業療法は身体だけでなく脳の機能回復も目的とする。認知症患者や精神障害患者も対象となり、食事やお風呂、着替えなど生活に欠かせない行為をスムーズに行うための療法だ。言語療法ではコミュニケーションと食べる機能の回復に重点を置く。脳卒中で脳に損傷を負った場合など、発声や摂食機能障害に対する療法が行われている。

どのようなリハビリが行われるかは病気やケガなどによって異なるが、リハビリも治療の1つであり公的医療保険の適用対象になる。

公的医療保険が適用されるリハビリの種類とは

公的医療保険によるリハビリは、「疾患別リハビリテーション」として5つに区分されている。
 

リハビリの種類 対象疾患 期限
心大血管疾患
リハビリテーション
急性心筋梗塞、狭心症、解離性大動脈瘤、心不全等 150日
脳血管疾患等
リハビリテーション
脳梗塞、脳出血、脊髄損傷、慢性の神経筋疾患、言語聴覚機能障害等 180日
廃用症候群
リハビリテーション
急性疾患等に伴う安静による廃用症候群
(長期の寝たきりなどによる心身への悪影響)で、
一定程度以上に動作能力、言語聴覚能力、日常生活能力が低下したもの
120日
運動器
リハビリテーション
脊椎損傷による四肢麻痺、体幹・上肢・下肢の外傷・骨折等 150日
呼吸器
リハビリテーション
慢性閉塞性肺疾患、肺炎、胸部外傷等 90日

医師の診断の元、患者は治療に必要なリハビリをそれぞれ設定された期限まで受けられる。期限を過ぎても治療上有効だと判断された場合、制限はあるもののリハビリの継続が可能だ。

リハビリ治療は民間医療保険の給付対象になるか

リハビリが公的医療保険の対象となるなら、民間医療保険でも給付の対象になるのだろうか。

民間医療保険の給付対象は公的医療保険より狭い

民間医療保険と公的医療保険の違いの1つとして保障範囲がある。

公的医療保険の場合、認められた治療であれば、日帰りだろうが入院だろうが給付の対象になる。患者が負担するのは、かかった医療費の1~3割だ。一方、民間医療保険は保障範囲が狭く、入院と手術に対する給付が基本である。特約をつければ通院などに対する給付を付加できるが、保障範囲は限られる。

民間医療保険によるリハビリ治療は特約付加も視野に入れる

民間医療保険でリハビリが保障対象となるかどうかは保険会社や商品による。リハビリが給付対象になるとすれば、入院給付と通院給付の対象に含まれる場合だろう。

たいていの民間医療保険は、「治療を目的とした不慮の事故や病気による入院」を保障対象としており、リハビリ治療を受けるための入院なら該当する可能性が高い。通院に関しても、公的医療保険の対象となるリハビリであれば民間医療保険の保障範囲に含まれるだろう。ただし通院給付は、その前後に病気やケガによる入院があることを条件とするものがほとんどであると認識しておきたい。

リハビリ治療に対する給付が支給されるとしても、その日数には限度がある。支払限度日数は契約内容や商品によって異なるが、1回の入院につき60日や120日に設定されていることが多い。リハビリは数年など長期に及ぶこともあり、入院給付や通院給付だけでカバーを考えるのは心もとないかもしれない。その場合は、一時金の特約付加を検討するのも1つの手だ。

多くの医療保険では、3大疾病への一時金給付などを付加できる。一時金の使い道は自由なため、入院や通院の給付では足りない分を補えるだろう。給付対象になる病気は限られているが、商品によっては病気等に関わらず退院した時に一時金を受け取れる特約を付加できるものもある。民間医療保険の通常の給付だけでリハビリ治療に備えるのが不安な人は、こうした特約の活用も検討したい。

医療保険だけでなく様々な選択肢からリハビリ治療に備えたい

民間医療保険でもリハビリ治療に備えられるとはいえ、限界はある。給付日数が限られていたり、保障を増やすことで保険料が高くなったりしてしまうからだ。リハビリが必要になるほどの病気や怪我をする可能性は決して高いともいえないため、どこまで備えればいいのかは判断しづらい。リハビリ治療への備えが心配なら、民間医療保険だけでなく貯蓄などで補うことも含めて様々な方法を検討してはいかがだろうか。

文・國村功志(資産形成FP)
 

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