長野県松本市を半日で観光するモデルコースを紹介します。
松本市は古くから松本城を中心に発展してきた城下町です。大きな都市である一方で、北アルプスの景色が目の前に広がり、あちこちに清らかな地下水が湧き出る自然豊かな街でもあります。
関東や東海からのアクセスがよい松本は、「日帰りでちょっと遠出したい」と思った日の観光にぴったり! 今回は日帰りで巡りやすいよう、半日の場合の松本観光モデルコースを作ってみました。
本当に半日で回りきれるのか、作ったモデルコースで実際に松本を観光してきましたので、所要時間も含めて紹介します。松本観光の参考にしてみてください!
目次
1. 松本駅到着(12:00~12:10)
新宿駅から特急あずさに揺られて2時間40分、松本駅に到着しました。
ではさっそく目的地に......と、その前に! 松本駅で立ち寄ってほしい2つのスポットを紹介します。到着していきなり、「松本らしさ」を体感できる場所なんです。
1つ目は駅ナカにあります。松本駅には「お城口」と「アルプス口」の2つの出口があるのですが、今回紹介するモデルコースはすべて、お城口側にあるスポット。だからといって、お城口に直行してしまうのはもったいありません! 振り返って、アルプス口のコンコースを見てみてください。
ガラス張りの通路の先に広がるのは、北アルプスの雄大な山々。アルプス口はその名の通り、北アルプスを一望できるビュースポットになっていました。風景写真を撮るもよし、みんなで山をバックに記念撮影するもよし。北アルプスの大自然を味わってみましょう。
2つ目はお城口側の広場にある、「深志の湧水(ふかしのゆうすい)」というスポット。松本はあちこちで湧水を見かけることのできる街ですが、駅の目の前でも地下水が湧き出ているのは驚きです。
水質検査済みの非常に綺麗な地下水だそうで、飲用も自己責任で可能とのこと。
せっかくなのでペットボトルに汲んで飲んでみました。 キリっと冷たくておいしかったです!
モデルコースの道中でもたくさん湧水スポットがあったので、周りながら見つけてみてください。あちこちから水のせせらぎが聞こえる街は、歩いているだけで癒されますよ。
JR松本駅
住所:長野県松本市深志1-1-1
電話番号:050-2016-1600 (JR東日本お問い合わせセンター)
2. 榑木野 松本駅舎店(12:10~12:50)
さっそくお昼にしましょう。松本市内でも有名な手打ちそば店「榑木野(くれきの)」に入ります。
有名なお店だからか、行列ができています! 平日のお昼どきで7組待ち。15分くらいで入れました。土日に行くならもう少し並ぶかもしれません。比較的お客さんの回転は早いものの、余裕をもってスケジュールを組んでおきましょう。
注文したのは「大海老天ざるそば(2,530円)」と「くるみだれ(370円)」。店頭の看板に書いてあった、店長おすすめの品です。
まずは普通のそばつゆでいただきましょう。細くのどごしのよい二八そばは、初夏にぴったりのさっぱりした味わい。雑味がなく、胃もたれしている日でもつるりと食べられそうです。
くるみだれでも食べてみると......かなり印象が変わります! 一気に濃厚なつけ麺を食べているかのような、パンチある味わいに変身しました。
そばつゆ、くるみだれ、そばつゆ......と交互に食べてみると、さっぱりとこってりで無限ループできそうです!
そばもさることながら、天ぷらもサクサクで絶品でした。ずっしりした2本の大海老天は、持ち上げるのも大変なほどです。
筆者は女性ですが、男性でもこれはかなり満足感のあるボリュームなのではないでしょうか。出張中のサラリーマンもたくさん来店していました。松本観光前のおいしいエナジーチャージにおすすめです。
榑木野 松本駅舎店
住所:〒390-0815 長野県松本市深志1-1-1 松本駅MIDORI 1階
電話:0263-38-0803
営業時間:10:00〜21:00(ラストオーダー20:30)
定休日:不定休
アクセス:JR松本駅 お城口 徒歩1分
公式サイト:榑木野
3. 松本市美術館(13:10~14:10)
駅前通りをまっすぐ歩いて12分。松本市美術館に到着しました。市の美術館というと、その市の出身者やゆかりのあるアーティストの作品を展示しているイメージですが、松本市美術館にはどんな作品があるのでしょうか?
美術館の敷地内に足を踏み入れたとたん、その答えが分かりました。
<草間彌生 ≪幻の華≫ 2002年 ©YAYOI KUSAMA>
<草間彌生 ≪松本から未来へ≫ 2016年 ©YAYOI KUSAMA>
大きなオブジェと壁一面のアートが出迎えてくれました。特徴的な水玉......! これは草間彌生ワールドですね。草間彌生は松本市出身の世界的なアーティストです。
館内に入ってみると、開放感のある空間に3階まで続く階段が伸びていました。1階には受付とミュージアムショップ、2階には市民ギャラリーや多目的ホール、3階には草間彌生をはじめとした、松本ゆかりのアーティストの作品が展示されています。
3階に上って、特集展示「草間彌生 魂のおきどころ」を鑑賞してみましょう。「特集展示」と冠されているものの、基本的にはいつでも見ることができます。
ちなみに、写真を撮れるのは≪大いなる巨大な南瓜≫のみ。あとは自分の目で体感してみてください。
<草間彌生 ≪大いなる巨大な南瓜≫ 2017年 ©YAYOI KUSAMA>
≪大いなる巨大な南瓜≫や美術館入口の≪幻の華≫に代表されるような、つるっとした質感のオブジェから、シャンデリアやライトを使った空間アート、油絵、詩、作品の中に入り込む体験型アートまで、ここでしか味わえない作品がたくさんあります。1人のアーティストがこんなに多くの表現方法を持っていることに驚きました。
なお、特集展示には作品ごとの説明書きがありません。あなたの自由な感性で、草間彌生ワールドに没入してみてください。
松本市美術館には草間彌生作品以外にも、書家・上條信山や洋画家・田村一男の作品や、文人・池上喜作のコレクションなどが並びます。ボリューム、バリエーションともに「市の美術館」の範囲を超えているように感じて、大満足の見ごたえでした。
松本市美術館
住所:〒390-0811 長野県松本市中央4-2-22
電話:0263-39-7400
開館時間:9:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日(休日の場合は次の最初の平日、8月は無休) 年末年始(12月29日~1月3日)
アクセス:JR松本駅 お城口 徒歩12分
公式サイト:松本市美術館
4. なわて通り(14:20~14:40)
アートを堪能したあとは、街歩きを楽しんでみてはいかがでしょうか。松本市美術館からなわて通りまでは徒歩15分ほど。隣を流れる女鳥羽川(めとばがわ)のせせらぎを聞きながら、商店会をゆったり散策してみましょう。あちこちにベンチがあるので、食べ歩きや休憩にもぴったりです。
明治時代から露店で賑わっていたなわて通りは、カエルの鳴き声が響く、自然豊かな場所でした。しかし、昭和の環境汚染でカエルの鳴き声を失ってしまったそうです。「もう一度なわて通りにカエルの鳴き声を」と願って建てられたのが、「カエル大明神」です。
社には木製のカエルが鎮座していて、まわりには手作りのカエルのてるてる坊主が吊り下げられていました。
なわて通りの西側入口には、「ガマ侍」というインパクト抜群のオブジェもあります。「ちょっと怖いね~」なんて言いながら、記念撮影しているお客さんがたくさんいました。
なわて通りにも湧水スポットがあります。「若返りの水」という井戸で、駅前の湧水同様に飲用もできるそう。こんなにきれいな湧水と、透き通った女鳥羽川を眺めていると、環境汚染が深刻だったころがあったなんて、なかなか想像もつきません。地元の方々の努力に感謝しつつ、マイナスイオンを浴びました。
商店街には昔ながらの金物屋、駄菓子屋から、おしゃれなカフェまで、さまざまな店舗が軒を連ねています。のんびり歩きながらあなた好みのお店を見つけてみてくださいね!
なわて通り
住所:〒390-0874 長野県松本市大手3-3-1
アクセス:JR松本駅 お城口 徒歩10分
公式サイト:なわて通り商店街
5. CAFE SWEET 縄手本店(14:40~15:10)
おしゃれな店舗が立ち並ぶなわて通りでも、ひときわ目立つレトロなカフェがありました。
「CAFE SWEET」の創業は1913年(大正2年)。なんと、創業110年以上の老舗です! 「さぞ古風で硬派な純喫茶なのだろう」と思い、意を決して入ってみると、思いのほか明るく、広々とした店内に驚きました。
初来店でも入りやすく、親しみやすい雰囲気です。椅子や机も大きくゆったりできるので、街歩きのあとひと息つくにはぴったりの場所かもしれません。
どうやらこのカフェ、松本出身の創業者がアメリカのシアトルで開業したのが始まりなんだとか。大正時代(1913年)にアメリカで創業だなんて、すごい志を持ったチャレンジャーですね......! 一般的な「大正レトロ」とはどこか違う雰囲気を感じたのは、そのせいかもしれません。
店内には、創業当時のシャンデリアやレジスターが飾られていました。約110年前のアメリカ、シックでおしゃれですね。
「CAFE SWEET 縄手本店」に来たならぜひ食べておきたいのが、「創業110周年記念 復刻版 昔ながらのパリジャンフレンチトースト(980円)」。実は、「CAFE SWEET」は長野県で初めてフランスパンを焼いたベーカリーなんだそうです。カフェの歴史を感じる特別感と、「フランスパンで作るフレンチトーストってどんな味なんだろう」という好奇心で、迷わず注文しました。
おいしい......!
フランスパンで作っているからか、耳の硬さがほどよく残り、外はパリッと、中はふわふわトロトロの食感です。ホイップクリームやメープルシロップを掛けなくても、パンがおいしくて十分完成されています。ぜひまずはひと口、そのまま食べてみてください。
CAFE SWEET 縄手本店
住所:〒390-0874 長野県松本市大手4-1−13 スヰト 1F
電話:0263-32-5300
営業時間:火ー金 10:00〜17:00/土日祝 8:00~16:00 (ラストオーダー:閉店30分前)
定休日:月曜日、年末年始
アクセス:JR松本駅 お城口 徒歩12分
公式サイト:CAFE SWEET 縄手本店
6. 松本城(15:20~16:30)
なわて通りから6分ほど歩けば、松本城に到着します。松本を観光するなら外せない、代表的なスポットですよね。モデルコースは余裕をもったタイムスケジュールにしていますが、最終入場は通常16:30ですので、夕方に寄りたい人は時間に気をつけましょう。
松本城と姫路城にしか残っていないという五重の天守に、天守を取り囲む水堀、遠くに望む北アルプスの山々は、どこから撮っても優美で写真映えする光景です。
外から見て楽しい天守ですが、やっぱり体験してみてほしいのが天守内の観覧。現存最古の木造天守には、約140段の階段があり、最大傾斜は約61度です。あなたは61度の階段を上ったことがありますか? 階段というよりロッククライミングのような傾斜を、手すりを頼りながらなんとか上っていくのは、もはや観覧ではなく登山にチャレンジするような気分です。
ヒイヒイ言いながら最上階の6階にたどり着くと、こんな景色に出会えました。四方それぞれ違った景色が楽しめますので、全方向の窓を覗いてみてください。
ちなみに、筆者よりずっと年上のおじいさん、おばあさんたちも登頂に成功していて、足腰の強さに感心してしまいました......!
天守内部には、しゃちほこや火縄銃などの収蔵品が多数展示されていますので、歴史好きはお見逃しなく。詳細な説明書きもあり、博物館のように楽しめます。
ちなみに、筆者が特に興味をもったのが、戦国期と江戸期(泰平の世)の建築の違いでした。どちらの時代にもまたがり、現代にも存続する松本城ならではの特徴です。
泰平の世になって増設されたのは、「辰巳附櫓(たつみつけやぐら)」と「月見櫓(つきみやぐら)」の2棟。特に月見櫓は、朱色の「回縁」と呼ばれるバルコニーのようなスペースがあり、外から見ても分かりやすいです。
月見櫓の内部はこのようになっています。お城の大きな窓でゆったり月を見上げられるのは、平和な時代だからこそですね......!
戦国期に作られた天守は「石落(いしおとし)」、「狭間(さま)」といった敵の侵入を防ぐような工夫が随所に施されていました。一方、月見櫓は非常に開放的で、「平和」を前提として作られたものであることを実感します。
戦乱の世と泰平の世、それぞれの時代に合わせた建築の工夫を感じられる松本城。駅からも歩いていける距離なので、松本に来たならぜひ立ち寄ってみてください。
松本城
住所:〒390-0873 長野県松本市丸の内4-1
電話:0263-32-2902
開場時間:通常8:30~17:00(最終入場16:30)
定休日:年末(12/29~12/31)を除き無休
アクセス:JR松本駅 お城口 徒歩20分
公式サイト:松本城
7. 開運堂 本店(16:40~17:00)
モデルコースの最後は、お土産屋さんに寄りましょう。
松本城から伸びる「大名町通り」というおしゃれな大通りを歩くこと9分。「開運堂 本店」に到着しました。「開運堂」は1884年(明治17年)創業の菓子店。なんと2024年で140年目になります! 「CAFE SWEET」もそうでしたが、松本には老舗のお店がたくさんありますね。
店内に入ると、和菓子から洋菓子まで幅広いジャンルのお菓子がショーケースに並んでいました。生菓子やケーキが気になるけれど、これから2時間半かけて電車で東京に帰ることを考えて断念......!
今回は「あづみの風情(648 円)」という最中(もなか)をお土産に買ってみました。その他、砂糖菓子やカステラ、チョコレート、クッキーなど、日持ちのいいお菓子がそろっているので、お好みでどうぞ。
家に帰ってひと口食べたときの写真です。
公式サイトによると、「砂糖キビから抽出した糖蜜で煉った素朴な風味の珍しい白餡を詰めたモナカ」とのこと。白餡だけど茶色くて、香ばしさがありつつもすっきりした味わいでした。温かい緑茶によく合います。
お土産で持ち帰るのは断念した生菓子ですが、店内に併設のカフェがあるのを発見。ここなら食べられるかも......! 「Kissa 千豆(きっさ せんず)」に寄り道してみました。
やはり、予想どおり生菓子がありました!
鮮やかな練りきりです。月替わりのようで、今月は「紫陽花(あじさい)」という和菓子なんだそう。紫陽花らしい紫とピンクの餡に、雨粒を模したような透明で小さなゼリーのようなものがついています。味がおいしいのはもちろんのこと、芸術品のような見た目は見ているだけで癒されました。時間に余裕があれば、ぜひカフェにも立ち寄ってみてください。
開運堂 本店
住所:〒390-0811 長野県松本市中央2-2-15
電話:0263-32-0506
営業時間:9:00~18:00
定休日:毎日営業(元旦のみ休業)
アクセス:JR松本駅 お城口 徒歩7分
公式サイト:開運堂
8. モデルコースを使って日帰り松本観光を楽しもう!
半日で回れる松本観光のモデルコースを紹介しました。お昼について夕方には帰る弾丸旅でしたが、回れたスポットは合計7ヶ所! いずれも松本駅から歩ける場所にあったので、効率よくあちこちで楽しむことができました。
なお、これはあくまでもモデルコースです。ゆったり回りたい人はいくつかのスポットを間引いたり、時間配分を調整したりしながら、あなたならではのコースを楽しんでみてください!
文・写真・安光あずみ/提供元・たびこふれ
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