「男性型脱毛症(AGA)」は、20代以降の成人男性に見られる進行性の脱毛症です。

遺伝や男性ホルモンの乱れが主な原因であり、日本人男性の3人に1人がAGAといわれています。

AGAに悩んでいる男性は国内のみならず世界中にたくさんいますが、そんな男性陣に朗報です。

英シェフィールド大学(University of Sheffield)はこのほど、AGA治療に効果的な化学物質を偶然に発見したと発表しました。

実験では、脱毛マウスの毛髪再生を80〜90%促進したとのことです。

薄毛とサヨナラできる日は近い?

研究の詳細は2024年6月3日付で医学雑誌『Frontiers in Pharmacology』に掲載されています。

目次

  • マウス研究の最中にたまたま発見
  • 太くて健康な毛がよみがえった!

マウス研究の最中にたまたま発見

偶然の発見は、体内に自然に存在する糖類である「デオキシリボース(deoxyribose)」の研究から始まっています。

研究チームは足かけ8年以上にわたり、マウスの局所的な傷の治癒についての研究を続けていました。

その中で、露出した傷口にデオキシリボースを塗布したところ、何も処置しなかったマウスに比べて、傷口周辺の毛がすくすくと早く再生することに気づいたのです。

これは予想外の出来事でした。

そこでチームは急遽、デオキシリボースの育毛効果について調べ、他の治療薬と比べてみることにしました。

マウス実験中に「デオキシリボース」の育毛効果に気づく
マウス実験中に「デオキシリボース」の育毛効果に気づく / Credit: canva/ナゾロジー編集部

AGAに効く治療薬は少ない、副作用がある場合も

そもそもAGAの治療薬として認可されている薬剤は非常に少ないです。

アメリカ食品医薬品局(FDA)によれば、「ミノキシジル」「フィナステリド」の2種類にしか正式に承認されていません。

(日本では、この2種類に加えてデュタステリドという薬剤も承認されている)

ミノキシジルはAGAの脱毛を遅らせながら、毛髪の再成長を促すことができますが、すべての人に効果が期待できるわけではありません。

AGAに効く治療薬は少ない
AGAに効く治療薬は少ない / Credit: canva

もしミノキシジルで効果が出なければ、フィナステリドに頼ることができます。

フィナステリドは男性患者の約80〜90%で脱毛を遅らせる効果がありますが、一度開始すると継続的に服用し続けなければなりません。

その中で勃起不全や精巣痛、性欲減退、抑うつ症状といった副作用が生じる場合があります。

そのため、AGAの治療は依然としてハードルが高く、治療薬としても別の選択肢を探す必要がありました。

こうした背景の中で、偶然にも発見されたのが「デオキシリボース」だったのです。