心も体も改善させる『リングフィットアドベンチャー』

リングコンとレッグバンド(左)、実験の様子(右)
リングコンとレッグバンド(左)、実験の様子(右) / Credit:任天堂,千葉大学

研究は、千葉大学医学部附属病院を受診した難治性腰痛の患者40名を対象に行われました。

この被験者グループを、通常の内服治療に加えて、週に1回40分程度RFAを実施してもらう介入群20名と、内服治療のみを行う対照群20名に分けて、症状の比較を行っていきました

調査されたのは、「腰痛」「臀部痛」「下肢痺れ」という身体的な痛みの程度と、「自己効力感(自信の強さ)」「運動恐怖感(患部を動かす恐怖心)」「破局的思考(痛みへの過剰な不安や恐怖)」という心理的な要因の程度です。

結果、腰痛・臀部痛・自己効力感については介入群で有意な改善が認められました

介入前後における疼痛および心理スコアの変化
介入前後における疼痛および心理スコアの変化 / Credit:佐藤崇司ら,Games for Health Journal(2021)

これは運動療法としての筋肉関節の柔軟性や血流改善による除痛効果が得られたという他に、自ら汗を流してキャラクターを操作し、ステージをクリアするといった達成感が心理面でも良い効果を生み、腰痛の軽減につながった可能性を示しています。

家庭用ゲームのリングフィットアドベンチャーで、専門家がいなくても難治とされる慢性腰痛症が改善され、健康の自己管理ができることが示されたというのは、大きな発見です。

これは医療費が増大する日本において、家庭用ゲームの活用がそれを削減できる可能性を示しています。

リングフィットアドベンチャーは医学的にも優れたゲームだったようです。

※この記事は2021年6月に公開されたものを再掲載したものです。

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参考文献

家庭用ゲーム機のフィットネスゲームで慢性的な腰痛が改善 痛みだけでなく心理的因子の改善効果が判明(千葉大学)
https://www.m.chiba-u.ac.jp/research-topics/210607/

元論文

Effects of Nintendo Ring Fit Adventure Exergame on Pain and Psychological Factors in Patients with Chronic Low Back Pain
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/g4h.2020.0180

ライター

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

編集者

やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?