年収が高いからといって、資産形成に成功するとは限らない。家計に関するアンケート結果から、富裕層になれるかどうかの鍵は、年収よりもむしろ「投資をしているかしていないか」にあることがわかった。 詳しく解説していこう。
年収を上げるよりも「投資比率」を上げよう
総合情報サイト「All About」の読者(調査総数4,798名)を対象に実施された“家計のアンケート”を参考に、投資の有無と資産額との関係を考察してみよう。
投資比率が高い人は年を追うごとに資産が増える
資産の何割を投資に回しているかを示す“投資比率” と資産額の関係を見ると、年齢層が高くなるにつれ、投資比率が高い人ほどより多くの金融資産を持つ傾向にあることが分かる。
投資を行っていない層では55~64歳の頃に金融資産が約1,000万円なのに対し、投資比率が20%未満、20~40%未満の層は55~64歳の頃に約3,000万円に達する。同じ年齢層で実に3倍もの差が出てしまうのだ。
さらに、投資比率が40~60%未満の層は55~64歳の頃に約3,500万円を超える。そして同じく50代後半から60代前半の層で、60~80%以上・すなわち給料などを含めた資産の8割を投資に回す層は4,000万円を超える資産を保有することがわかった。
世帯収入にかかわらず投資をしたほうが資産は増える
「投資に回せる余剰資産がある人は、そもそも高収入なのではないか」と考える人もいるだろう。
そこで、投資をしている層としていない層の資産額を世帯年収ごとに整理したデータを見てみると、どの世帯年収帯でも、投資をしている世帯のほうがより多くの資産を蓄えていることが分かる。
投資期間が長いほど資産額は増える
基本的には投資を行う期間が長いほど、資産額が増える傾向が見られる。例えば、65~74歳で20年以上投資を継続している層の平均金融資産は5,000万円にも達している。
これは「複利効果」 も影響しているとみられる。複利効果とは、リターンを再投資することでリターンがリターンを生み、資産が増えるスピードが加速する現象のことだ。
投資をする人は節約上手でもある
同アンケート調査では、回答者の消費傾向も調査。それによると、投資をしている人はしていない人に比べ、年収に占める通信費と保険料の割合が低い傾向が見られた。
調査レポートではこれを節約傾向とみなしているが、むしろ、通信費や保険料を安くできるマネーリテラシーに長けていることを示しているともいえそうだ。事実、「All About」のサイト閲覧傾向を分析すると、投資をしている人ほど、貯蓄や投資、保険などの情報や具体的なお金のテクニックを知ろうとする傾向が見られたという。
資産が多い人ほどリスクの低い商品を選ぶ
以上の調査結果から、同じ年収であっても投資をしている人のほうが資産額は多くなり、年齢層や投資期間に伴いその格差は大きくなっていくことが明らかになった。
もちろん、投資にはリスクが伴うが、投機性の高い手法を避け、長い目で見たリターンを考えて慎重に取り組めば、高い確率で資産額を増やすことに貢献するといってよさそうだ。
なお、同調査では、投資をしている人の中でも資産が多い人ほどリスクの低い投資商品を選び、資産の低い人はリスクの高い投資商品を選ぶ傾向が見られたという。
少額からでも投資を始める経験が大切
投資を始めると、マネーリテラシーが高まることで節約術が身につきやすい。また、少しでも多くのお金を投資に充てようとすることも、節約のモチベーションにつながる。
投資は少額であったとしても、前述の複利効果によって長期的に運用を続ければ将来的には2倍、3倍まで資産額が増えることがあるため、できるだけ早い段階で投資に取り組み始めることが重要だ。
もちろん年収を増やす努力も同時にしたいが、投資は始めなければいつまで経ってもリターンが得られない。この記事をきっかけに、ぜひ資産運用にチャレンジしてほしい。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。