中央アメリカのパナマ南部コクレ県。この地では、6世紀から11世紀にかけてコクレ文化が栄えており、その遺跡の墳墓からは多くの陶器や装身具、そして黄金製の装飾品が出土している。そのような出土品に混じって、1940年にとある奇妙な遺物が発見された。
その遺物は黄金細工で長さ約20cm、口を開けたワニもしくはジャガーを模したような形状をしており、その背中には四角くカットした大きなエメラルドが埋め込まれていた。目を引くのはその尾の部分であり、そこには歯車らしきものが付属しており、単に動物をかたどったものではなくメカニックなものをかたどったものではないかとも考えられた。
現在、所蔵しているフィラデルフィアのペンシルベニア大学博物館では、「大きなエメラルドがはめ込まれたジャガーで、口はヘビをかたどっている」との説明がなされているという。
当地において、ジャガーは神聖な動物と見なされていたようであり、それがジャガーをかたどった理由であるというのは考えられる。だが、この解説に疑問を持ったのが、コロンビアで発見された黄金製ペンダントをジェット機ではないかと推測したことでも知られる、アメリカの動物学者・超常現象研究家ウィヴァン・T・サンダースンであった。彼は、これが単なるジャガーをかたどったものとは考えられないとし、ワニにしても胴体が寸詰まり、足の関節が逆になっている点がおかしいと主張したのだ。
確かに、他の出土された像などについては、一目見て何を表しているかわかるものが多いため、実際のものを忠実に再現して作ったと考えられる。そんな中で、このような想像を要するような極端なデザインのものを当時の職人が果たして作り得たのかということについては確かに疑問だ。結果、サンダースンが推測した回答は、歯車の他に両側と先端に付いた謎のアームといった全体的なフォルムから、土木工事のブルドーザーをかたどったミニチュアではないかというものであった。
そのように見てみると、背中のエメラルドの部分は座席、口から左右に出ているヒゲはハンドル、飛び出した目はライト、歯車は巻き上げ装置、先端の三角形の小片は泥除け、などに見えなくはない。
もちろん、そうした開発がブルドーザーを用いてなされたという記録は一切確認されていない。ジャガーであるのは聖獣であったからであると共に、歯車のような部分については太陽を表している装飾で、さらにエメラルドが宗教的儀礼に使用されていたとの見解がある。このことから、このいわゆる黄金ブルドーザーは王など身分の高い相手への献上品であったのではないかとも言われている。
一方で、マヤを含むメソアメリカ文明の遺物においては、車輪の機械の痕跡が見つかっていないにも関わらず車の玩具も発見されているということから、初めてこの建設機械を目撃した古代の職人が機械であることがわからず、未知の動物のようなものとして作り上げたのではないかとの説も見られる。
密林の中に突如として現れる神殿などの巨大建造物、そして巨石が見受けられるマヤ文明。この黄金ブルドーザーの正体究明は、これらの謎を解く鍵となり得るのだろうか。
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文=黒蠍けいすけ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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