ザ・スターリンは、遠藤ミチロウ(2019年没)を中心として1980年に結成されたパンク・ロックバンドである。1985年に解散、以後遠藤主催のライブイベントなどでの一夜限りの再結成が数度なされ、筋肉少女帯のボーカル大槻ケンヂや声優の上坂すみれがファンであることを公言している。
ザ・スターリンは、自衛隊をもじった「自閉体」という名のバンドが前進であるという。バンド名の「スターリン」という名は、ソ連の最高指導者であったヨシフ・スターリンに由来しているが、「世界で最も嫌われている男の名前ならすぐに覚えてもらえる」という動機から命名したと言われている。
俗に、日本一危険なバンドとまで称された彼らのライブ・パフォーマンスは、まさに過激につぐ過激。当初は何の変哲もない演奏スタイルであったが、観客のノリが悪いことに苛立った遠藤がヤケになって服を脱いだ途端にウケたため、以来パフォーマンスが過激になっていったのだという。裸で歌うのはよくあることで、客との殴り合いもしばしば発生しており、遠藤はこれを「客とのコミュニケーション」と称していた。
そんなザ・スターリンのライブでの逸話は多い。軽く列挙するだけでも、客席にイノシシを放つ、客に向かって放尿をする、牛乳に大便を混ぜたものを客に浴びせる、爆竹あるいは豚の内臓や頭を客に投げ込む、ライブ中に自慰行為を行なう、等々上げればきりがない。
また、あまりにも歌詞の内容が過激すぎたために書き直しがなされるといったこともあり、果ては、ある学園祭に出演した際に遠藤が全裸となったことが原因で逮捕された経験もあった。遠藤については、ある雑誌のインタビューにて音楽グループ「YMO」を罵倒したことが発端となり、メンバーであった坂本龍一もラジオ番組で遠藤を名指して悪口の応酬をするなど不仲であった(のちに和解しイベント共演もしている)。
この他、当時所属していたレコード会社のザ・スターリンのディレクターが、役員会議の最中にザ・スターリンの悪口を言い放った役員に腹を立て、会議中に響く大音量でザ・スターリンのレコードをかける、さらには、ある打ち上げの際にバンド「グループ魂」のメンバー港カヲルの母親の前で代表曲『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』を歌ったところ、カヲルの母が鬱病になってしまった、といった実に多くの逸話が残っている。
過激なバンドというのはインディーズでも何例が見受けられており、中には会場をユンボで破壊するといった例すらある。それらの多くは一部とはいえ人気を広めていくことが叶わず消滅していった。その一方で、ザ・スターリンは今もなおカリスマ的な人気を獲得しており、多くのファンを心酔させている。
実のところ、彼らの楽曲の音楽的評価は一定の支持を得ており、攻撃的ながらどこかポップにも思えるそうした楽曲は、音楽家どころか他のジャンルの人々にも影響を与えたと言われている。過激なパフォーマンスがフォーカスされがちではあるが、遠藤自身は非常に温厚な人物であったようであり、デーモン小暮閣下も「腰が低くてニコニコした良い人」と評している。多くの人々を惹きつけたザ・スターリンの魅力は、パフォーマンスだけの力では無かったに違いない。
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文=黒蠍けいすけ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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