青木ヶ原樹海といえば、数々の都市伝説などが語られるスポットとして有名だ。松本清張の著作『波の塔』によって自殺の名所としての知名度が高まったことをはじめとして、コンパスが効かない、命を絶つことを躊躇った者たちが集まった村が存在するなど、話題に事欠かない場所でもある。
ただ、このうちコンパスが効かないということについて事実ではないことが判っており、また実際に精進湖民宿村と呼ばれる民泊施設のある村が元から存在している。
さて、その樹海の中には、「乾徳道場」と呼ばれている謎の施設が存在している。この道場は、もともと富士講における修行場であったものの明治末期から大正期ごろに一度廃絶し、昭和30年代から日蓮宗系の夫婦が修行をかねて生活し始めた場所であると言われている。
近年の探索者によると、道場は現在無人になっているようであり、関係者が判らなくなってしまっているという。玄関の戸は鍵がかけられており、玄関先にある建築寄付者芳名には先にもあげた精進村の名が並んでいるという。壁には「祈りの言葉」と題した貼り紙がなされており、「実在者(おおがみさま)の御心が此の世に顕れますように 一、神(諸法実相)の国が開かれますように 一、凡ての人が神(諸法実相)に蘇りますように」という旨が書かれている。道場建設時点からあったのか、後年に貼られたものであるかはわかっていないという。
この道場のそばには、精進洞窟群と呼ばれるいくつかの洞窟が存在しており、その中の一つである「精進御穴日洞」という洞窟は、かつて僧侶が50日もの間修行をし、即身仏になったという伝えが残っている。乾徳道場は、この僧侶を守るために建てられたものであると言われている。なお、精進穴を開山したのは誓行徳山(せいぎょうとくざん)であると言われており、その跡を継ぎ青木ヶ原の富士信仰を維持・発展させたのが二世の賢鏡であったようである。
現在では知る人ぞ知る建造物であるが、1990年代にミリオンセラーとなったほどにブームを巻き起こした鶴見済の著作『完全自殺マニュアル』の中に、「自殺をとどめようとする謎の坊主」との記載があったことでいっとき注目されたことがある。だが、その影響により90年代後半には、多くの落書きが道場になされるなど悲運に襲われてしまったそうだ。
富士信仰と深く関わっていたというこの施設であるが、行政から立ち退きの要請がなされていたと言われているため、勝手に建造されたものであるらしい。今となっては、道場の詳細については近隣に点在するいくつかの石碑を読み解く以外に、その歴史を知る手段は無いというのが現状である。
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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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