地域住民へのメリットとデメリット

 大規模な商業施設が、地元の反対を受けて開業をとりやめるケースはよくあるものなのか。また、大規模な商業施設の出店により、周辺エリアの商店街や中小小売店などが減り住民が不利益を被るということは実際にあるものなのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「1970年代からスーパーを中心に大型店の出店が相次ぎ、商店街や中小商店は客を奪われるとして各地で反対運動が勃発した。そこで、74年に大店法が施行され、大型店の出店は商業関係者など地域との調整が必要となり、地元の反対で出店を断念するケースも見られた。その後、商店の後継者難の問題などもあり商店街の衰退も進み、地元の商業者のパワーはダウンし反対運動は沈静化の方向に向かった。2000年には大店法に代わる大店立地法が施行され、出店にともなう騒音や交通渋滞などが発生することもあり、地域住民の生活環境を守ることに重点が置かれた。

 郊外での大型商業施設の出店は確実に中心市街地の商業集積の減退を招き、地域経済に影響を及ぼすが、地方は車社会なので地域住民にとっては来店の利便性が向上し、商品やサービスなど新たな魅力を享受でき、歓迎する向きが多い。ただ、高齢者など車を持たない住民にとっては不便になることもあり、なじみの商店がこれを機会に閉店したり、出店により付近の道路が渋滞するなどのデメリットも生じる。

 一方で、大型商業施設が出店することで地域の活性化や大量の雇用の発生、広域からの集客に伴う周辺店舗への来店などが期待できるといったメリットもある。デベロッパーは地域の店舗のテナント出店にも力を入れており、地元の商業者にとっては事業を拡大する機会にもなる。近年では出店に際して地元自治体との事前協議も行われ、商業施設と連携してさまざまな取り組みも行われており、コミュニティ機能の役割を高め、地域住民が交流する場も設けられ、地域と共生する施設づくりに力を入れている」

 また、流通業界関係者はいう。

「イオンモール須坂が開業する須坂長野東インターチェンジ周辺エリアには、『アークランズ』の店舗や『ホテルルートイン』といった商業施設のほか、メーカーの製造拠点や物流施設なども集積する。須坂市と地元経済界、そしてイオンモールをはじめとする事業者が密に連携して開発に取り組んでいる様子がうかがえる」

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?