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最近、本人に代わり会社へ退職の申し出等を行う「退職代行サービス」が注目されています。突然、従業員から退職代行サービスを通じて退職の連絡をされ、対応が分からず慌ててしまう会社も増えています。

従業員の側も、退職の意思を伝えても「人手不足」「退職の申し出は3ヵ月前まで」など様々な理由で退職を拒まれ、辞めたいけど辞めさせてもらえない、そんな相談が増えています。こうした「退職」にまつわるトラブルが増えているいま、雇用の専門家である社労士の立場から、法律上の退職の条件、そして退職代行から連絡が来た場合の企業側の注意点について解説します。

働く人には「退職の自由」がある

退職の意思を伝えているにも関わらず辞めさせてもらえない時、「違法なのでは?」と考える人も少なくありません。

実は、労働基準法には退職に関する明確な定義は設けられていません。そのため、退職については労働基準法のほかに民法の定めも合わせて知る必要があります。

退職は法律ではどのように定められているのでしょうか。

法律では、会社を退職することは労働者の自由です。ただし、退職できる条件は雇用契約が有期契約か無期契約かによって異なります。

●無期雇用労働者の場合

いわゆる正社員などの契約期間の定めがない労働者の場合は、いつでも退職の意思を伝えることができます。退職の意思を伝えた日から2週間経過すれば雇用契約は終了します。

つまり、退職希望日の2週間前までに退職を申し出ることでいつでも退職できるということです。退職までの2週間は土日祝日もカウントします。営業日だけのカウントではないので注意が必要です。

退職の意思は口頭でも文書でもかまいません。退職届を提出するなど退職の申し出をすれば、法律上はいつでも辞めることができます。退職の理由はどのようなものでもかまいません。会社の承諾も不要です。

●有期契約労働者の場合

契約社員やアルバイトなど期間の定めのある雇用契約を結んでいる労働者の場合は、原則として契約期間が満了するまで退職できません。

ただし、「やむを得ない事由」がある場合は退職が認められるとされています。例えば、病気や引っ越し、家族の介護などのケースです。どういった場合が「やむを得ない事由」と判断されるかどうかは個別の事情によるため、自己判断しないように注意が必要です。

また、やむを得ない事由がなくても、雇用開始から1年経過していればいつでも退職を申し出ることができます。無期雇用の労働者と同様に会社に退職を申し出た2週間後に雇用契約が終了します。

このように、従業員は退職の意思を伝えてから2週間経過しなければ退職することはできませんので、会社は従業員が即日退職を求めてきても、原則として応じる必要はないのです。

ただし、例外として即日退職できる場合があります。入社に際して明示された労働条件が事実と異なっていた場合です。

例えば、労働時間、就業場所、業務内容、給与、雇用期間など労働条件が事前の明示と実際の間に違いがあった場合は即時退職することができます。