【最新モデル試乗】今や貴重品、メルセデス・ベンツCLE200クーペが演出する優雅で特別な「特別な時間」
(画像=メルセデス・ベンツCLE200クーペ・スポーツ/価格:9SATC 850万円。CLEは従来のEクラス&Cクラス・クーペを統合したニューカマー。伸びやかで美しいスタイリングとクーペらしいパーソナルな味わいが魅力。2リッターターボ(204ps)搭載、『CAR and DRIVER』より引用)

あえて「クーペという選択」、それはクルマ好きの贅沢

メルセデスはクーペに強い思い入れを持つメーカーである。過去に何台もの印象的なクーペを送り出してきた。少し前までSクラス、Eクラス、Cクラスのそれぞれにクーペとカブリオレをラインアップしていたほどだ。ところが時代は変わり、セダンやステーションワゴン以上にニーズの減少が顕著な2ドアクーペは存続するのが難しくなってきた。

それでもプレミムブランドのメルセデスにとって、伝統的な2ドアクーペは守るべき存在。ラインアップしないわけにはいかない。そこで従来は個別に設定されていたEクラスとCクラスの2ドアクーペを統合するというアイデアを実践。CLEという新しい名称を与えた。

【最新モデル試乗】今や貴重品、メルセデス・ベンツCLE200クーペが演出する優雅で特別な「特別な時間」
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

ボディサイズや登場時期からして実質的には新型Eクラス・クーペの後継と考えるのが妥当だろう。誰の目にも魅力的に映るスタイリッシュな姿が最大の魅力だ。
伝統のロングホイールベースとロングボンネット、フロントが短くリアが長めのオーバーハング、力強く張り出した前後ホイールアーチがこれほど絵になるのは、クーペなればこそ。2ピースデザインのスリムなリアコンビランプに象徴されるように各部はクーペにふさわしくデザインされている。

ラインアップは2リッター直4直噴ターボ(204ps)を搭載したCLE200クーペ・スポーツのモノグレードで、内外装にはAMGラインを標準装備し、価格は850万円となる。

優雅な室内。快適で大人を虜にする走りが味わえる

あえてクーペを選ぶユーザーのために、室内はスペシャル感の演出が施されている。大きなドアは日本の商業施設のような狭い駐車場では不便に感じる場合もあるだろう。だが標準装備されるオシャレな専用スポーツシートを目にするや、クーペに乗る特別感に浸ることができる。着座するとシートベルトフィーダーが自動的にせり出してくるの機構は、クーペならではの装備だ。ドライバーズシートにリラクゼーション機能が付くのもうれしい。

【最新モデル試乗】今や貴重品、メルセデス・ベンツCLE200クーペが演出する優雅で特別な「特別な時間」
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】今や貴重品、メルセデス・ベンツCLE200クーペが演出する優雅で特別な「特別な時間」
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

後席には2人掛けのフルサイズのシートが備わり、アクセスする際に便利なイージーエントリー機能が付く。前席肩口にあるレザーストラップを引くと自動的に前席がスライドしてくれる。

ホイールベースが長いので、後席に乗り込んでしまえば成人男性でもそれほど苦にならない。ヘッドレストも大人が座るシーンを想定したしっかりとしたものが用意されている。ただし、リアウィンドウは開閉しない。メルセデスのクーペはサイドウィンドウを下ろすとBピラーがなくなるのが伝統だった。この点は少々寂しい。

縦のラインを配した新感覚のインパネはオシャレなクーペによく似合う。タブレット状の大画面ディスプレイが眼前と中央に配されているのは、すでに見慣れた光景ながらやはり先進感がある。
新型セダンやワゴンに採用された運転席から助手席までを覆うMBUXスーパースクリーンの設定がないのは、クーペには似合わないと判断されたのだろうか。

メルセデスの最新モデルらしく、機能面は充実している。学習能力を高めた第3世代のMBUXは実に便利だ。あらかじめ設定しておくと一定の条件を満たしたときに作動するルーティン機能、設定を予測提案する機能、より簡単に音声対話できるジャストトーク機能により、ドライバーや乗員の操作負担を軽減してくれる。

【最新モデル試乗】今や貴重品、メルセデス・ベンツCLE200クーペが演出する優雅で特別な「特別な時間」
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】今や貴重品、メルセデス・ベンツCLE200クーペが演出する優雅で特別な「特別な時間」
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

足回りはスポーツサスペンションが標準となり、オプションのドライバーズパッケージ(40万円)を装着すると、標準で19㌅のタイヤ&ホイールが20インチとなるほか、連続可変ダンピングシステムを備えたダイナミック・ボディコントロール・サスペンションやリアアクスルステアリングが装備され、ダイレクトステアリングのギアレシオがクイックな設定になる。

走り出して感心した点は、予想よりも乗り心地がずっといいことだ。低偏平な20㌅タイヤを履くとは思えないほど路面にしなやかに追従し、突き上げを感じさせない。
しかもクルマの動きが極めて素直で、まさしく意のままに操れる感覚がある。操舵に対する応答遅れはもちろん、どこにも動きにカドを感じない。挙動を乱すことなくイメージしたラインを正確にトレースしていける。

巧みなサスペンションチューニングと完成度の高い後輪操舵の組み合わせで、俊敏ながら落ち着いた安定した走りを実現している。これなら助手席に大切なゲストを迎えて快適なドライブを満喫できる。

従来のBSGに替えてISGを搭載したパワートレーンは、1.8トン級の車体を軽やかに加速させてくれる。とはいえエンジンの選択肢が4気筒に限られる点は、このクラスのプレミアムクーペを求めるユーザーにとってどう映るか気になるところではある。ゆくゆくAMGモデルが追加されればつじつまがあうのだろう。

CLEは、このところクーペがめっきり少数派になってきた中に現れた、すべてを身につけたメルセデスのニューカマーである。スタイリッシュで上品。存在自体が素敵だ。なぜあえて自動車メーカーは伝統的にクーペを手がけ、ユーザーはクーペを選ぶのか、その答えの一端がうかがえた。