私が思うに、バイデン大統領の日本にとっての最大の成果は、同盟国・同士国との連携の枠組みを作ったことにある。安倍トランプ時代に確立した「自由で開かれたインド太平洋」を背景に、日米韓、日米比、AUKUS、NATO再興(ウクライナ戦争に対する欧州諸国自身のリアクションではあるが)をした。これらは、次期政権でも必ずひき継ぎ重視してもらいたい。

しかし、トランプ大統領は、第一期を思い出しても、「バイでのディール」が基本だ。日本の駐留経費も負担増と言ってきた。責任分担をしないと同盟国だからといって支援はもらえない。日本は、戦略三文書を策定し、防衛費の倍増を表明しており、同盟の負担分担の点については、きちんと理解されれば日米同盟には余り心配はいらないと思っている。安倍トランプ時代に気づいた日本に対する信頼というアセットは生きているものと思う。

むしろ、一番の心配は、せっかくのバイデン政権下で作ったクワッド、日米韓、日米比などの抑止ネットワークミニラテラルの積み重ねやNATO結束が減退することである。トランプ氏当選の場合には、日本は、速やかに個人的信頼関係を確立し、こうしたことの重要性について理解を求めると同時に、トランプ氏自身というより、周りの外交安保アドバザーや米議会を押さえておくことが大切だ。

トランプ2.0での外交安保アドバイザー候補の一人のロバート・オブライエン氏(第一期トランプ政権の安保担当補佐官)がフォーリン・アフェアーズに書いた論文「『力による平和』の再来」(共和党の公約と同じタイトル)を読むと、レーガン時代の対外戦略を模してトランプ時代を評価し、中国との新冷戦や中国と連携するロシア、イラン、北朝鮮に対する勝利を得るという考え方が示されている。

レーガン大統領は、「力」を背景にソ連との冷戦を米国勝利で終わらせたが、同様のイメージをトランプ氏に抱き期待していることがわかる。

トランプ氏かハリス氏か、あと3か月しかないことと、米国の大統領選挙の仕組みを考えると、ラストベルト3州(ウィスコンシン、ペンシルバニア、ミシガン)を押さえた候補者が勝利する可能性が高いので、ここで圧倒的人気のバンス氏を副大統領候補に持ってきたトランプ氏が圧倒的に有利だと思う。したがって、トランプ2.0の可能性は高いと考える。

ただ、米国大統領選挙は本当に投票箱を開けるまで何が起こるかわからない。今まであまり存在感のなかったハリス氏が、大統領候補指名を受けて、様々な機会に自身の考えを発信していったりトランプ氏との討論の中で冴えを見せたりして飛躍する可能性もゼロではない。実際、ヒラリー対トランプで結局トランプが勝った例もある。

トランプ2.0が日本や世界にとって吉となる可能性もあると思う。トランプ氏の強みは何といってもあの予測不可能性による抑止力であり、これは同時にマイナスに転ずる可能性もあるもので、正直、どう転がるかはよくわからないけれど。

いずれにせよ、日本に有事あらば共に戦うことをコミットしている唯一の同盟国である米国大統領は日本にとって死活的に重要な存在であることは間違いない。この危機の時代に、いかなる場合も日本の国益を守るため、大統領選挙に引き続き注目して日本として何をすべきか考えていきたい。

編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ2024年7月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。