米国のテック企業NFP.ioの複製防止技術を採用した初のアート作品が、今年8月6~10日にイリノイ州ローズモントで開催される「第133回世界貨幣博覧会」の表彰晩餐会でオークションにかけられる。オークション実施日は8月9日(金)で、収益は2025年のRobert Lecce上級成人奨学金プログラムに寄付される予定だ。

NFP.ioの技術により偽造品が事実上排除され、人々はアート作品だけでなく真正性の保証も手に入れることができる。

複製防止技術が搭載された絵画

世界貨幣博覧会は、数百万ドル相当の希少コインや貨幣の秘蔵物を鑑賞できるイベント。来場者はディーラーと売買や取引を行えるほか、著名な貨幣学者による講演やプレゼンテーションに参加することが可能だ。

今回、同イベントに出展するNFP.ioの作品は、米国の希少コインの中でも人気の高いアメリカ貨幣協会(ANA)の1804年銀貨を新進気鋭のアーティストのLaura Verschoore氏がアクリルとメタリックの絵の具を巧みに組み合わせて表現した絵画。

絵画のキャンバス内には、肉眼では見えない3次元の複製不可能なマーカーが隠されており、迅速かつ簡単な検証方法で真正性を確認することが可能。いわばアート作品における“ハイテクな指紋”のようなものだ。

それぞれの絵画は、デジタルパスポートのような「デジタル所有権証明書」にリンクされている。セキュリティがさらに強化され、将来的にはAIを活用した分析の統合への道が開かれるという。

世界貨幣博覧会を主催するANAの第63代会長 Thomas J. Uram氏は「1891年以来、ANAは貨幣学の未来を守ることに尽力してきた。私たちの世界では、セキュリティがすべてだ。だからこそ、NFP.ioの先駆的な技術を市場に投入できることを嬉しく思っている」とコメントしている。

専門家への依頼は不要。誰でも真正性を確認できる

NFP.ioの技術により、熟練したコレクターから初めて購入する人まで、誰でも自分のアートが本物であることを簡単に確認できるようになる。専門家に高い費用を支払って鑑定してもらう必要はない。

偽造品が事実上排除され、消費者からの信頼とブランド保護が高まる点や、NFP.ioがクリエイターやブランドが信頼性を収益化できるように支援している点なども大きなメリットだ。

NFP.ioのCEOであるYury Shapshal氏は「この技術は、アートの所有権を変革するだけでなく、クリエイティブ業界全体で信頼と透明性の新時代を育む可能性を秘めていると信じている」と語っている。

(文・Haruka Isobe)