死期が近づくと見る夢に変化が訪れるという。夢の世界はより色鮮やかになり、登場する人物の表情がはっきりとわかるようになるというのだ。そして夢の内容もきわめて似通ったパターンが見られるようになるというのである。
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■死が近い患者に起こっている“本当のこと”とは
医師は患者のケアにおいて実証的、科学的な態度で臨まなければならないことは言うまでもない。それゆえ、医療の現場で起こっている“本当のこと”については往々にして“灯台下暗し”となっているのかもしれない。
米ニューヨーク州の終末期医療施設「ホスピス・バッファロー」で医務官のチーフを務めるクリストファー・カール医師も、それまではそうした“鈍感な”医師の1人であったという。しかしある一件から死期が近い患者が見た夢の内容を真剣に聞き、記録に残すようになったのである
この施設に着任してまだ日が浅いある日の勤務で、死期がもうすぐそこまで迫っている患者に対し、点滴を施してわずかばかりの間でも生き長らえさせようとカール医師は患者のいるベッドへ向かった。
患者の部屋に入った医師は、すでに部屋にいた看護師がベッドにいる患者に何もしようとしないことを不思議に思うも、延命措置をしようと準備を始めた。しかし次の瞬間、その看護師ナンシーに制止されたのだ。
「先生、ノー、ノー。彼は今死につつあります」
「どうしてそんなことが言えるんだい?」とカール医師が疑問の声を上げた。
「彼は今、亡くなった母親と会っているんです」
長年の看護師としての経験からナンシーは、今まさに死を迎えようというこの患者が、夢の中で亡き母親と親子水いらずの幸せな時間を過ごしていることを理解していたのである。延命措置などせずに、そのままそっとしておいてあげたほうがいいと医師にそれとなく示したのだ。