中世の錬金術師たちが追求した不老不死の万能薬“エリクサー”は存在するのか――。最新の医学研究ではマウスの寿命を25%延ばす薬が開発されている。
■マウスの寿命を25%延ばす薬の開発に成功
“不老不死”はあまりにも非現実的であるが、現在の寿命を飛躍的に延ばすことができる画期的な新薬が近く登場するかもしれない――。
我々の身体は齢を重ねるにつれて損傷したタンパク質や化学物質が蓄積され、免疫系がそれを感染症と誤認することで各種の炎症が引き起こされる。これらの炎症は、がん、線維症などの疾患のリスクを高め、いわゆる“老化”が進むことになるのだ。
イギリスの医学研究機関「Medical Research Council Laboratory of Medical Science(MRC LMS)」の研究者は、 老化が進んだマウスは「IL-11(インターロイキン11)」と呼ばれるタンパク質のレベルが著しく高いことを発見した。
2016年の時点で彼らはすでにIL-11が炎症反応を引き起こす免疫細胞と「線維芽細胞」を刺激していることを突き止めていたのだが、これにより、研究チームはIL-11のレベルが老化の進行に重要な役割を果たしている可能性があるという最初の気づきを得たのである。
この疑問をさらに検証するため、科学者らはマウスのIL-11タンパク質を生成する遺伝子を不活性化し、マウスの寿命が延びるかどうかを調べた。
そして実験の結果、IL-11遺伝子が不活性化されたマウスはほかのマウスよりも25%長く生きたことが判明したのである。
IL-11を阻害することができれば寿命が延びる可能性が示唆されたのだが、デューク・シンガポール国立大学医学部のスチュアート・クック教授のチームが、マウスからIL-11タンパク質を除去する抗体を開発することに成功した。
クック教授は37匹のマウスに抗体を注射し、マウスが生後75週目(人間で55歳に相当する)になったときから3週間ごとに1回投与した。
すると注射を受けなかった38匹のマウスと比較して、IL-11抗体を投与されたマウスは20%以上長生きしたことが判明した。薬を投与された75週目のマウスは平均155週間生きたが、注射を受けなかったマウス平均120週間の寿命に留まった。
さらに重要なのは、マウスは長生きしただけでなく、健康寿命も長く維持したことだ。治療を受けたマウスはがんが少なく、老化や虚弱の一般的な兆候も見られず、筋力が向上したのである。
「Nature」に掲載された論文で研究者らは「私たちのデータは、抗IL-11療法が人間の健康寿命と寿命を延ばすための潜在的に応用可能なアプローチであることを示唆している」と言及している。
このIL-11阻害薬は“エリクサー”に準ずる夢のアンチエンジング薬になるのか。
IL-11阻害薬は「安心できる安全性プロファイルを持ち、現在、線維性炎症性疾患の初期段階の臨床試験中です」と研究チームは説明し「人間の細胞で報告された最初の結果は有望です」と前向きなコメントをしている。
文字通りの“人生100年時代”の到来は近いといえそうだが、延びた寿命で何をするのか、医療技術の進展と共に人生後半の“メインテーマ”がそれぞれに託されてもいるのだろう。
参考:「Daily Mail」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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