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数年前、スペインで16人の子供が「狼男症候群」を発症したとして話題になった。狼男症候群とは、全身に異常な量の毛が生える、いわゆる「多毛症」である。多毛症は、遺伝子の異常による先天性の場合もあるが、薬物や悪性腫瘍などの影響で後天的に発症することもある。治療の選択肢は少なく、治療結果は患者にとって必ずしも満足できるものではない。剃毛や抜毛などの対処法の中でも、長期的な効果を期待できるのはレーザー脱毛くらいである。
スペインの事例は後天的な多毛症で、脱毛症治療薬としても使用されるミノキシジルに汚染された薬を服用した乳児たちに症状が現れたとされる。同国の医薬品医療機器局は2019年7月、湾岸都市マラガを拠点とする製薬会社「FarmaQuimica Sur」に対して、一部の薬を流通させないように命じた。
多毛症を発症した子供たちは、胃食道逆流症や消化不良の治療薬としてオメプラゾールが処方されていた。しかし、それがミノキシジルに汚染されていたため、多毛症を発症してしまった。実際、子供たちがオメプラゾールの服用をやめると、異常な体毛の成長が治まったという。子供たちの保護者は、汚染された薬を処方された場合は子供に医療機関での診察を受けさせ、購入した薬に関しては薬局に確認するようにアドバイスを受けた。
FarmaQuimica Surは現在、営業資格を停止されており、薬の製造や輸入、頒布ができない。薬を卸しているインドの業者が汚染の発生源と見られている。スペイン当局は、今回の薬害は子供向けに処方された薬に限定されており、オメプラゾールを服用している大人は多毛症を心配する必要はないと述べている。多毛症を発症した子供たちに関しても、汚染された薬の服用をやめれば回復するだろうとのことだ。
スペインの事例のように、薬害が社会問題となることは少なくない。日本でも、サリドマイドや非加熱製剤など、深刻な薬害事件が起きている。薬が必ずしも安全ではないことを理解した上で、服薬によって身体に異変が生じたら、早めに医療機関で診断を受けるべきである。 (文=標葉実則)
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