横浜フリューゲルス、京都パープルサンガ(現京都サンガ)、ガンバ大阪、ジュビロ磐田でプレーした遠藤保仁氏(現G大阪コーチ)は、昨季限りで現役引退。鹿児島実業高校や日本代表でチームメイトだった松井大輔氏との対談で、自身の引退理由を語るとともに、フィジカル重視の現代サッカーに対する複雑な思いを吐露。サッカースタイルの変化については、中村俊輔氏(現横浜FCコーチ)、中田英寿氏、柏木陽介氏(現FC岐阜クラブアンバサダー)も遠藤氏と同様、否定的な見解を示している。
インターネット動画配信サービス『DAZN』では、今月25日に「遠藤保仁 特別番組 ~走り続けた26年の記憶~」が公開。遠藤氏の現役生活や引退を特集しているが、日本代表のレジェンドたちによる対談も収録されている。
松井氏が遠藤氏に様々な質問をぶつける中、引退理由を訊くと、遠藤氏は「今のサッカーに嫌気が差した」と回答。松井氏が「現代サッカーはアスリートっぽくなってきていますけど…」と言葉を返すと、「正直なところ、昔に戻ってほしい。テクニック系に。今のサッカーはファイト(コンタクトプレー)が多くなるから楽しいと思うけど、俺は“ザ・10番”がいてこそのサッカーだと思っているから」と自身の思い描くプレースタイルとの乖離を語っている。
それだけに、松井氏が「(テクニック系に)また戻って来ると思いますよ」と私見を述べると、遠藤氏は「20年後くらいに戻っているんじゃない。何なら5年後になっていてほしい」と、テクニックに優れた選手が重宝されるプレースタイルへの回帰を熱望している。
現在、古巣G大阪のトップチームでコーチを務めている遠藤氏。松井氏から指導者像を訊かれると、「選手目線を大事にしたい」と語った上で、以下のようなコメントを残している。
「自分の感性を大事にしながら、今の時代に多少なりとも合わせる。ただ、そっち寄り(フィジカル重視のスタイル)には行きなくない。(自分の思い描くスタイルは)超攻撃的。5節でクビになっても良い。『あの監督、楽しそうだったな』と選手から思われて辞めたい。『もしかしたら0-5で負けるかもしれないけど、得点チャンスは10回あったよ』と思っているけど、3年後には変わっているかもしれない」
なお、フィジカル重視の現代サッカーは、サンフレッチェ広島・浦和レッズ・FC岐阜・日本代表OBの柏木氏のキャリアにも影響を与えた模様。同氏はインターネット動画配信サービス『DAZN』で今月7日配信開始の『内田篤人のフットボール・タイム』にゲスト出演した際、昨季限りで現役理由について「怪我もあるけど、最終的には今のサッカーのスタイルについていけない。ついていけないというか、面白くない。フィジカルが重視されてきている。(自分のような)フィジカルゼロの人間に『フィジカルが…』と言われたら、しんどい」と本音を語っている。
またドイツW杯の舞台でプレーした中田氏は昨年11月、セリエA(イタリア1部)ローマ時代のチームメイトであるフランチェスコ・トッティ氏と対談した際に「どれだけ走れて、どのぐらい速いか、強いか(が重要になっている)。サッカーをすることと、走ることが全く異なるもの。そこが問題なのに分かっていない人が多い。ファンタジーのあるプレーはもう見られない」と述べると、「だから、俺はもうサッカーは一切見ない」と切り捨てていた。
さらに、日本代表屈指のテクニシャンとして知られていた中村氏は、今月25日放送予定の『KICK OFF! KANSAI』(毎日放送)で遠藤氏と対談した際、遠藤氏が引退理由を説明する際に発した「今のサッカーが…なんて言ったらいいのか。言い方難しいな。今現代のサッカーに飽きた」というコメントに対して「うん」と頷いている。