昨今の自衛隊は訓練不足になっている。昨今の隊員が小銃を携行したまま行方不明になる事件や訓練中の事故等は、乱射や脱走防止の教育訓練の時間をとっていれば起こらなかったといっても過言ではない。
では、なぜ日夜訓練に励む自衛隊が訓練不足になっているのか、元陸自幹部の筆者が明らかにしていく。
■一部だけが満足する見かけ倒しの訓練
自衛隊の一部上級部隊(指揮系統で上の部隊)では、年間を通じて数多くの訓練が計画されている。これらの活動は、上級部隊の構想具現化の役割を果たしているが、同時に第一線部隊隊員の訓練時間の削減をもたらしている。
上級部隊が企画する訓練のため、優先事項が第一線部隊の訓練よりも高く、規模も大きいことから、訓練参加者(敵側含む)としてならまだしも、訓練を管理する側(勝ち負けの審判やご飯を作る炊事要員などの裏方仕事)として長期間拘束されることも多い。
第一線部隊や新人隊員の訓練機会が時間的にも人数的にも制約されているのが現状である。
結果的に上級部隊の訓練は規模が大きいため、訓練の成果は大きいものとされがちだが、それは企画した側の上級部隊の一部が満足するものであり、その代わりに第一線部隊の訓練機会を代償として払っているのは皮肉以外の何者でもないだろう。