値上げしないことがアダに? 在庫も全然ないとの噂も

 アパレル業界では円安、原料高、輸送費高騰などの影響などにより、商品の値上げを行った企業が多い。しかし、ワークマンは今年8月まではプライベートブランドの主力継続商品の価格を据え置くことを宣言。ワークマンとしても苦渋の決断だったとのことだが、この出来事がかえってブランドの質低下が囁かれる遠因になった可能性があるという。

「現状、日本のアパレル業界の商品は97%近くがインポートですから、為替の影響をモロに受けることになります。今や1ドル150円の時代ですから、単純計算で昔よりも仕入れ価格が跳ね上がっているんです。そのため本来であれば、企業努力やコスト吸収といった次元で価格を維持できる問題ではないのです。ユニクロは過去に値上げをして客離れを引き起こし、価格設定には慎重なほうなのですが、それでも値上げするぐらい今の為替状況は企業にとって不利です。実際の製造環境は明らかになっていませんが、ワークマンは価格を据え置くという経営判断の影響で、商品の質が下がったと疑われても仕方ないとは思います」(同)

 在庫問題に関しても、ワークマンならではの事情があるそうだ。

「ワークマンは、基本的に在庫を嫌う企業だと推測できます。そもそもアパレル企業では、在庫が経営のネックであるので、できるだけ早く売り尽くしたいという事情があります。そのうえ、ワークマンは店舗のほとんどがフランチャイズなので、店舗間での在庫移動がしにくく、融通が利きづらい。また製造を外部に任せる仕入れ型のビジネスを展開しており、ファーストリテイリングのようなSPA(企画から製造、販売まで一貫して行うビジネスモデル)ではないので、受注分の製造が終わったら追加で生産することはほとんどなく、打ち止めになりやすいのです。結果、客の意見や要望を取り入れることよりも、製造分を確実に売り切ることを優先する方針になっているのでしょう」(同)

 このままの状況が続けば、客は競合他社のブランドにどんどん流れるリスクは高まっていく。ワークマンは今後どんな戦略を打ち立てていくべきか。

「やはり女性の集客に向けたブランドづくり、ラインナップの充実が急務になるでしょう。男性客だけでは収益の増加は見込めず、やはり女性客を増やすことで収入の柱を形成するべきなので、『ワークマン女子』や『ワークマンカラーズ』に注力していくという方向性自体は間違っていないと思います。

 またカップル層、ファミリー層では、夫の衣服を妻が購入する代理購買という現象がよく見られますが、ワークマンはこうした客層もきちんと拾っていくべきです。そのためには、店舗デザインもカジュアルに仕上げていくべきでしょう。現状のワークマンの店舗は、職人向けという言葉にふさわしい少々殺風景なつくりになっているので、女性も来店しやすい店舗づくりを整える必要がある。そして、女性の好む商品を増やしていければ、積極的な来店動機を形成でき、女性客増を見込めるのではないでしょうか」(同)

(取材・文=文月/A4studio、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)

提供元・Business Journal

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