医師はなぜ謝れないのか?

実は、患者さんが医療訴訟で医師を訴えると、医師は弁護士から「謝ってはいけない」と言われることが多いのです。

医療の現場では一定の確率で予測不能の不幸な結果が発生してしまうことがあります。それは「仕方ないこと」であって「医師の過失ではない」。だから、裁判で明確な判断が出るまではなるべく謝罪せず、「あの時は仕方なかった」と主張することが重要。

そういうことを弁護士から言われるのです。

まあ、法律の世界観だとそうなのかもしれませんが…。何か納得いきませんね。

だって、それなら、被害者側がカルテや論文など明確な証拠を揃えて「医師の過失」だったことを証明しなければなりません。医療のプロである医師に対して、訴える側は多くの場合医療の素人なのですから、しかもカルテなどの情報を握っているのは医師の側ですから…

結果として、医療の現場で何か問題が起こったとき、医師からの謝罪は基本的に期待できない。ということになります。

つまり、医師にとって「謝罪」は通常やってはいけないこと。仮にするとしても、極めて稀な、特別な事件なのです。

知念氏が「謝罪したことは公開するな」、と申し出た背景にもこのような事情があると思われます。

その他の医師たちが謝罪せずにやり過ごしている(アカウントを削除して逃亡した医師もいます…)のも同じような背景があるのでしょう。

医師も謝罪すべき

でも、僕も医師なので医師としてはっきりいわせていただきたい。

「医師は、医師である前に人である。だから医師も間違うことはある。間違えたら謝る。人としてそれくらいはしろ!」

と。

特に今回の件は、明らかに「本物」の死体検案書だったわけですからそれについて「偽造」などと言っていた人に弁解の余地はありません。そのときに鵜川さんたちを揶揄していた医療従事者は全員、真摯に「謝罪」すべきです。

だって、死体検案書が「本物」だったということは、被害を受けられて亡くなられた方が実際におられるということであり、その方のご家族もおられるということです。失意のうちに亡くなられた御本人や、悲しみにくれているご家族にとって、医師が大挙して「偽造」「捏造」だなんて言ってくるなんて耐えられないことです。

せめて「謝罪」するのが人として当然であり、医師として最低限やるべきことだと思います。