仮想通貨で補填される場合

次に、流出したビットコインが同等の仮想通貨で補填される場合についてです。この場合、実質的には資産の移動がないと見なされます。以下のように処理されます。

「失われたビットコインの数量」と「補填されるビットコインの数量」が同じであるため、投資家の資産の総額に変化がないと見なされます。「補填された仮想通貨」は、元のビットコインと同等の価値として扱われ、特に税務上の処理は不要です。

つまり、補填されたビットコインが元のビットコインと同じ数量であれば、資産が実質的に動いていないため、課税対象にはなりません。この場合、納税者は特に追加の税務処理を行う必要がなく、補填前と同じ状況が継続されることになると考えられます。

ただし、こちらについては、DMMビットコインの取引履歴上、どのように扱われるか、そもそも取引履歴に失ったビットコインと補てんされるビットコインが表記されてくるのかが不明です。

例えばDMMビットコインの取引履歴でビットコインのマイナスと、補填されるビットコインの枚数がプラスで表示されるのであれば、損益計算ツール上で売買として計算される可能性があります。つまりビットコインで補填される場合でも利益確定されたものとして課税されてしまう可能性があるということです。

今後のDMMビットコインからのアナウンスを待った上で慎重に検討する必要があります。

留意するべき事項

留意点としては、実際に補填される際に具体的な形態や条件によって税務処理が異なる場合があることです。例えば、補填されるビットコインの数量が異なる場合や、補填が遅れて価値が変動する場合など、様々なシナリオが考えられます。

このため、個々のケースに応じた正確な判断が求められます。

ハッキングされたビットコインはどうなるか

ハッキングされたビットコインがどこに流れるかというと、過去の報告によれば北朝鮮のハッカー集団が関与している可能性が高いとされています。盗まれた資産はミサイルや兵器の開発資金に使われているという報告もあり、非常に深刻な問題となっています。

この問題は、国際的な仮想通貨のセキュリティ対策の強化を促すものとなっています。各国の政府や企業は、仮想通貨のセキュリティ対策をさらに強化し、ハッキングによる被害を未然に防ぐための取り組みを進めています。

まとめ DMMから約482億円相当のビットコインが流出。 日本円で補填された場合は、強制的に利確されるため、損益計算と確定申告が必要。 仮想通貨で補填された場合は、特に税務上の処理は不要。ただしケースバイケースなので注意。 ハッキングされた資産は北朝鮮の開発資金に使われている可能性が高い。

ビットコインの流出事件は、仮想通貨のセキュリティと税務に関する重要な教訓となります。今後どのようにして仮想通貨取引所はその資産を守っていくのか、安全に管理される事を期待します。

村上ゆういち (税理士・公認会計士) 新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)、横河電機株式会社、アカウンティングフォース税理士法人での勤務を経て、2020年に村上裕一公認会計士事務所設立。現在は「魔界の税理士」としてSNSやyoutubeでも活躍し、仮想通貨(暗号資産)・NFT・ブロックチェーンゲーム領域を専門とする。 YouTube 魔界の税理士ちゃんねる https://www.youtube.com/@makai-tax

■倒産は”悪”なのか?(横須賀輝尚 経営コンサルタント) ■士業専門コンサルタントが教える、補助金コンサルタントの活用 (横須賀輝尚 経営コンサルタント) ■なぜJALの会社更生法適用は叩かれた? なぜ倒産で社長が自己破産? 意外と知らない「倒産」の仕組み(横須賀輝尚 経営コンサルタント) ■ブームに乗った一発屋と二代目社長は危ない?プロ士業が見た倒産シグナル (横須賀輝尚 経営コンサルタント) ■士業専門コンサルタントが教える、登記だけではない、優秀な司法書士へ依頼すべき業務 (横須賀輝尚 経営者)

編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年7月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。